渡辺 謙さんが語る、映画『木挽町のあだ討ち』──互いを理解し合い傷つけ合わない世界観に惚れ込んだ
撮影・山本康典 スタイリング・JB ヘア&メイク・倉田正樹(enfleurage) 文・中田 花
昨年のエンタメ界隈で、ひときわ存在感を放っていたのが渡辺謙さん。
大ヒットした映画『国宝』では主人公ふたりの厳しい師匠であり、物語の支柱となった花井半二郎役を。大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』では気力溢れる理想のリーダー、田沼意次を演じた。秋には賭け将棋の世界を描いた映画『盤上の向日葵』が公開。
「もうほんと、体を張りましたんで。『国宝』の稽古をしながら大河もやって、1個終わって1週間で次を立ち上げるとか。そんな感じが続いたのでさすがに僕もガタがきて、マネージャーに“あんた、死ぬで俺”とボヤいて(笑)」
2025年の公開作が話題をさらう中、さらに撮影は続く。直木賞と山本周五郎賞をW受賞したミステリー時代小説『木挽町のあだ討ち』の映画化だ。
物語の舞台となる芝居小屋の中心人物であり、仇討ちの裏で見事な策略を企てる黒幕、篠田金治役を演じる。
「あのね、これたまたまなんだけど、大河ドラマの撮影中にこの作品も始まったんですね。で、それこそまるでしがらみですよ。江戸城の中では、田沼がきっちり策を練りながら大河の話を撮ってるんですけど、いっぽうでこの金治は武家社会からドロップアウトしてるんですよね。口調なんかも時代ものというより、けっこう江戸のべらんめえで済んでしまったので、のびのびとやらせてもらいました」
『木挽町のあだ討ち』は「仇討ち」ではあっても、互いを理解し合い傷つけ合わない世界観、に惚れ込んだそう。
「原作を読んだとき、誰か映画化してくれないかなとは思ってたんです。武士という身分への束縛や体制の仕組みに押さえつけられるんじゃなくて、そこから解放していくっていうお話が良くて。現代だって日々、些末なことでいがみ合ったりするところを、誰も傷つかずにみんながちょっと幸せになれる解決方法ってあるんじゃないの?と」
謙さんが思う、日本人の良さとは?
「『国宝』みたいな映画が大勢の人の心に届いたことで、僕らが良いと思っていたものの根っこが、まだ僕らの中にちゃんと残っていたことをみんなで再認識できた気がしますよね。ひとつの目標に狼煙をあげて生きていく日本人は、清々しいしかっこいいよねって」
ところで、そんな謙さんを奥様は褒めてくれたりするんですか?
「わりと褒め合いますよ。褒めるまでのレベルは低めですけど。今日のドレッシング上手にできたねだとか(笑)」
『クロワッサン』1160号より
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