スタイリストの竹内万貴さんのとっておきの器を拝見。
撮影・徳永 彩(KiKi inc.) 構成&文・薄葉亜希子
使うほどに楽しみが増す、懐の深い和の器。
たとえば、そば猪口でお茶を飲み、抹茶碗で小どんぶりをいただく。平鉢にはデザートやフルーツを盛って。
「お気に入りの器の新しい使い方を見つけるとうれしくなる」と、スタイリストの竹内万貴さん。土の温もりが魅力の陶器をはじめ、シンプルな青磁やガラスの器を愛用。中でもこの3種は特徴的な形が使いやすいそう。
「佇まいといいますか、器の口縁から高台にかけてのシルエットが好きなんです。特に抹茶碗は焼き物の醍醐味を味わえるもの。手でくるんだときの感触、ちょうどいい重さや厚み。〝手取り〟といいますが、実際に触れてしっくりくるものを探し、毎日使う。それだけで気分がちょっとよくなり、暮らしが豊かになります」
そば猪口はフリーカップのように気軽に使え、平鉢は縁の余白が盛りつけた料理をおいしく見せてくれる。
「そば猪口は飲む、食べるのほか量ることもでき、道具としての美しさもあります。平鉢は一点ものも多いので、あえて冒険してみるのも手。形が一緒ならば色や柄の違うものを取り皿としてテーブルに並べて、〝ふきよせ〟のスタイルにしても楽しいと思います」
抹茶碗
大きめの飯碗感覚で使いこなす。
「抹茶碗というと茶道のイメージから手が出しにくい印象があるかもしれませんが、実はとても便利。スープや麺類、小丼にも使えて、カフェオレボウルとしてもちょうどいい。大きめの飯碗のような感覚で使っています」。
手前の三島手の大胆な文様と、スープをよそった唐津の碗はともに村木雄児さん作。奥は笹山芳人さんの碗。ゆるやかに口が広がり小丼としてよく使う。中央のやわらかな白釉は鳥取の民藝・上神焼(かずわやき)のもの。「和食器には"属人器"と呼ばれる文化があり、中でもご飯茶碗は一人ひとりが自分用を持ちますよね。好きな作家さんを見つけたり、器のお店や骨董市に足を運んでみたり。自分好みの愛着が湧く一品を見つけてはいかがでしょうか」
そば猪口
グラス、酒器、小鉢としても大活躍!
シンプルな形と手ごろなサイズゆえ、使い勝手のいいそば猪口。小鉢代わりに納豆や汁けの多い惣菜、ヨーグルトを入れることも。いくつか揃えておき、湯呑みやデザートカップとして来客時にも重宝している。スタッキング収納できる点もありがたい。
「奥の青磁はおそらく瀬戸のデッドストック品でしょう。骨董店で見つけたのですが、使いやすくて買い足しました。微妙に異なる青みも気に入っています。手前は沖縄の再生ガラス・奥原硝子製造所のもの。程よい厚みで丈夫なのでゼリーやプリン型にもよく、冷蔵庫で固めてそのまま食卓に並べても素敵です」
平鉢
粋が漂う、皿と丼のハイブリッド。
おかずをのせて食卓の中央に置くのも、銘々の取り皿にしてもよし。意外と使い回しが利くのが平鉢。「絶妙な深さと傾斜があるのでスプーンですくう料理にもぴったり。シチューやパスタ、チャーハンにも。5寸(直径15cm)ほどの小ぶりなサイズがちょうどよく、和洋中とらわれず自由に楽しんでいます」。左の刷毛目は骨董市で見つけたもの。奥の唐津は抹茶碗も愛用している村木雄児さんの作品。カボチャサラダを盛ったのは鶴野啓司さんの粉引の鉢。「自ら土を掘り、薪窯で焼成する鶴野さんの器には唯一無二の存在感があります」
『クロワッサン』1125号より
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