キウイフルーツの故郷ニュージーランドで、最高品質のキウイ作りに取り組む生産者を訪ねました。
写真・文 斎藤理子
世界最大の輸出量を誇るニュージーランドのゼスプリキウイは、南半球の秋である3月〜5月が収穫期。身近なフルーツの中では栄養素充足率ナンバーワンの〈ポジティブフード〉、キウイの生産から出荷までを取材しました。
よりジューシーで美味しいキウイ作りに取り組む、生産者のアンドレ・ロシャさんの素敵な自宅へ。
オークランドから車で東へ2時間ほど。美しい海岸線に囲まれたタウランガという街のワイヒビーチに、キウイ生産者のアンドレ・ロシャさんの自宅はあります。家のリビングに通されると、目の前にはいきなり大海原がひらけ、思わず歓声が出てしまう絶景。リビング、テラスからそのままビーチへと続く、遮るものは何もない圧倒的な景色が出迎えてくれます。
ロシャさんはスイス出身。ニュージランド人の妻との結婚を機に、この土地に移住したそうです。キウイの生産方法を学び、現在は自宅近くのケリケリという場所に12ヘクタールの農地を所有し、9ヘクタールでサンゴールドキウイ、3ヘクタールでグリーンキウイを育てています。
「ニュージーランド北島の気候や土壌は、キウイの栽培には最適。1年中温暖な土地ですが冬は0℃になる日も多く、実はそれがキウイの生育には欠かせません。冬が寒いと春に咲く花が増え、実がたくさんつき収穫が増えるからです。夏は30℃を超えることが滅多にないのも生育には適しています」。と、ロシャさん。さっそく園地に連れていってもらいました。
今年も大豊作!たわわに実るキウイが圧巻のロシャさんの園地。
気持ちの良い風が果実の間を通り抜けていく広大なロシャさんの園地では、収穫間近のキウイがたわわに実っています。日当たりと風通しは、美味しいキウイ作りには欠かせません。ロシャさんの園地は隅々まで手入れがきちんと施されているのが見てとれ、手間暇をかけて丁寧に育てているのがよくわかります。
収穫までに9カ月かかるキウイ作りは、冬期に行われる木の剪定や風害対策から始まります。去年実がなった古い枝を伐採し、水はけ・水持ちのバランスがいい肥沃な土壌作りに取り組みます。春になると芽が出て花が咲くので、そこにミツバチを投入し受粉させて結実を待ちます。雌の木に結実したら雄の木は伐採。夏の間、太陽の日差しを浴びてキウイはどんどん育ちます。育っていないものは間引き、適切な環境を保って秋の収穫に備えます。収穫は、品種によってばらつきがありますが、おおむねニュージーランドの秋にあたる3月〜5月。一定の水準に達したものだけが収穫され、ゼスプリの選果場に送られます。
「キウイを育てていく中で、一番難しいのはタイミングです。剪定、受粉、摘果(間引き)、などなど重要なポイントはたくさんありますが、その都度ベストなタイミングで作業しないとだめなんです。毎年気候や自然条件も変わるので、その年にどういう育ち方をしているのか細かく観察し続けることが大事ですね」。霜害に見舞われた昨年に比べ、今年は出来が良いとロシャさん。豊作の年もあればそうでない年もあるけれど、自然相手なので努力を重ねて少しでも美味しいキウイを作っていきたいと語ります。
どれも簡単なのに驚く美味しさ。キウイを使ったヘルシーなメニューを堪能。
ロシャさんの自宅に戻ると、キウイをふんだんに使った美味しい料理とバーベーキューが待っていました。グリーンキウイは、タンパク質分解酵素のアクチニジン活性が高いそうで、肉をキウイでマリネしておくと柔らかくジューシーに焼き上がります。肉の消化も助けるので、マリネする以外にも肉料理と一緒にキウイを一緒に摂るのはタンパク質の消化吸収に効果的。美味しく食べながら、ヘルシーな食生活が実践できるというわけです。
今回ロシャさんが用意してくれたのは、ラムランプ肉と牛ヒレ肉のバーベキュー。テラスに設置されたご自慢のバーベキューグリルで、自ら肉を焼いてくれます。もちろん眼前は絶景の海。なんとも素敵なライフスタイルは、ただただ羨ましいの一言です。肉と一緒にたくさんの野菜も食べるのがニュージーランド・スタイルだそうで、キウイを使った色とりどりのサラダはそれだけでご馳走。食材の組み合わせも参考になります。サラダにたっぷりキウイは、日々の食卓にもぜひ取り入れたいアイデアです。
ハイテクを駆使したパックハウスで選別&梱包され、全世界に発送されるゼスプリ社のキウイ。
生産者から発送されるキウイは、ゼスプリ社のパックハウスという選果場に集荷されます。ここで、厳密な選別、品質検査を受け、品種やサイズごとに箱詰めされ、国内外に送られていきます。果樹園から運ばれる箱には、どこの果樹園のどこのブロックから来たものかが明記され、生産者が混合しないように管理されています。
ハイテクを駆使したパックハウスでも出色は、赤外線カメラを使った選果システム。12本のベルトに分けられたキウイ1個1個につき、瞬時に120〜150カットの写真を撮り、サイズや形、熟度などを判断。基準に満たないものを自動で排除していきます。その後ひとつずつ重さが測られ、等級が決まります。7〜8割は機械でグレーディングされますが、微妙な瑕疵など機械で判断できないものは最終的に肉眼で検品され、箱詰めに進みます。
すべての箱にはそれぞれ、生産者、園地の栽培区画、種類、サイズなどが記載されたバーコードが付けられ、箱単位での履歴追跡が可能です。このバーコードが、農園から店頭まで一括管理されているゼスプリ社キウイの安心安全を証明しています。
ゼスプリ インターナショナルは、キウイ生産者が100%株主の会社で、ニュージーランド産キウイを世界50カ国以上で輸出・販売しています。アンドレ・ロシャさんのような生産者が作るキウイはゼスプリを通して輸出され、農園から店頭までの生産・流通の各段階に設けられた独自の厳しい基準に添って徹底した品質管理を行なっています。
品質、残留農薬、検疫、トレーサビリティなど、安全性をはじめとするあらゆる項目で独自の基準を設定しているゼスプリ社。2025年までにすべての包装をリサイクルかリユース可能、または堆肥化可能なものにすること。2025年までに〈カーボン・ポジティブ(二酸化炭素の吸収量が排出量を上回る状態)を目指すこと。水資源の収集・強化・保護など健全なエコシステムの確立に重点を置くこと。など、サステナビリティの実現にも積極的に取り組んでいます。