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医師が教える、腸内環境と睡眠の関係。

夏、寝苦しくなる問題も、腸内環境と密接に関わりがありました。腸活で睡眠まで整う理由を解説します。

イラストレーション・小林マキ

腸内環境と睡眠の質が関係するのはなぜ?

医師が教える、腸内環境と睡眠の関係。

keyword 1| 腸脳相関で、腸と脳は互いに影響を与え合っている。

緊張でお腹が痛くなる、など腸と脳は影響を与え合っていると知られてきたが、近年はますます研究が進んでいる。

「腸内細菌の情報は脳に伝達されており、腸内細菌のバランスが崩れると、うつ病のリスクが上がることも報告されています。さらに、強いストレスから下痢や便秘を引き起こしてしまう過敏性腸症候群のように、脳の状態もまた腸の働きに影響を与えており、これを『腸脳相関』と呼びます」(東京疲労・睡眠クリニック院長・梶本修身さん)

そしてストレスの感じ方は、睡眠にも大きな影響を与える。

「ストレスが緩和されることで副交感神経が優位になり、睡眠の質が向上します。また、筑波大学などの共同研究では、腸内細菌のいないマウスは、ストレス耐性が低いだけでなく、睡眠にも乱れが生じると明らかにしました。睡眠と腸を整えることは、心身の健康にダイレクトに繋がるのです」

keyword 2| 自律神経の乱れは不眠だけでなく便秘や下痢も引き起こす。

睡眠の質をコントロールする自律神経。その中枢に疲労が蓄積していると、睡眠の質は下がる一方。さらに、自律神経のバランスが乱れていると、腸のぜん動運動もスムーズに行えず、便秘や下痢などの不調も起こしやすくなる。

「24時間休む間もなく働く自律神経は、体の中で最も疲れやすい器官。さらに夏の炎天下では自律神経がフル稼働しなければならず、他の季節よりも疲れています。自律神経がしっかりと休まるように、睡眠の環境をしっかり整えること、また疲労回復につながる食事をとることが大切です」

疲労回復におすすめなのが鶏むね肉に含まれている“イミダペプチド”。

「渡り鳥はどうして休むことなく移動ができるのか、という研究から発見され、カツオやマグロなど回遊魚にも多く含まれています」

また、腸内環境を悪化させて睡眠の質を落とさないよう、発酵食材や食物繊維をしっかりとり、便秘や下痢を予防することも欠かさないで。

keyword 3|入眠に必要なホルモンの材料 セロトニンは9割腸で作られる。

良質な睡眠に欠かせないのが睡眠ホルモンの「メラトニン」ですが、その元となるのが「セロトニン」。

「ストレスを軽減し、精神の安定をもたらす幸せホルモン『セロトニン』。脳と腸で作られていますが、実は脳で作られるセロトニンは数%。9割近くが腸で作られており、腸のぜん動運動に関与し、腸内細菌叢バランスを安定させます」

セロトニンの元となるのは、必須アミノ酸のトリプトファンという物質。

「鶏むね肉をはじめ、チーズやヨーグルトといった乳製品、納豆や豆腐などの大豆製品、バナナなどに多く含まれます。これらの食材をとり、セロトニンの分泌を促すことが、良質な睡眠をとる上で重要であるとわかってきました」

さらに加熱されていない乳製品には、ラクトフェリンというタンパク質も。

「腸内の善玉菌を増殖させ、悪玉菌を抑える栄養素です。加熱された製品には含まれないので、プロセスチーズよりもナチュラルチーズがおすすめです」

  • 梶本修身

    梶本修身 さん (かじもと・おさみ)

    東京疲労・睡眠クリニック院長

    医師、医学博士。1962年生まれ。著書に『名医が教える 腸内環境を改善して睡眠の質を上げる方法』(大洋図書)など多数。

『クロワッサン』1098号より

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