酒肴の組み合わせは自由、料理研究家の井原裕子さんがお酒を楽しむ、絶品おつまみ。
さあみなさん、お酒の準備はととのいましたか? では、ご一緒に、カンパ〜イ!!
撮影・小川朋央 文・石飛カノ
酒肴の組み合わせは自由気ままに。好きな日本酒は氷を入れてキリッと。
「これ、面白いでしょ? 曽祖父が集めていた明治時代の骨董品なんです」
と言って見せてくれたのが入れ子細工の枡とサイコロ。賽の目には「一合」「五合」「一升」「話」「歌」「踊」という文字が書かれている。
「飲みながらサイコロを転がして一合飲む人、歌う人、踊る人、と遊んだんでしょうね。お酒飲みで骨董好きだった曽祖父らしいコレクション」
料理研究家・井原裕子さんはその血をしっかり受け継いだ無類のお酒好き。作家ものの大小の片口にブルゴーニュやボルドー、リースリングやシャンパン用の各種ワイングラス、口当たりのよさそうな冷酒グラスと、さまざまな酒器からも愛酒家ぶりが窺える。
そして自宅兼スタジオのダイニングにあるセラーは日本酒やワインで満たされ、戸棚には最近お気に入りだというスコッチウイスキーやおしゃれなボトルのジンが並ぶ。
「ワインも日本酒もジンもウイスキーも基本的にお酒はなんでも飲みます。甘酒を作ってそれを韓国焼酎で割る、“マイマッコリ”みたいなものも好きですね」
晩酌のスターティングメンバーを決めるのに迷ってしまうほどの選択肢。これは楽しすぎる。
「食べるものを作ってから飲むものを決めます。今日は何を飲もうかなあと。でも日本酒だから和食というわけではなく、なんとなくの相性で。この食べ物とこのお酒、合うかもしれないと試してみたりもします」
さすが、料理研究家。いつも一辺倒ではなく晩酌のレパートリーは自由自在に広がっていく。
〈料理研究家・井原裕子さんのある日の晩酌〉
旬野菜をふんだんに使った3品です!
コロッと切ったキウイと薄切りのきゅうりを、ミント、レモン汁、塩、こしょう、オリーブオイルで和えたさっぱりテイストのサラダ。
豚肉をしゃぶしゃぶした後、あくを掬ってレタスを茹でるとスープが染みて美味しくいただける。ソースはオイスターソースとごま油、砂糖少々。
枝豆をしょうゆ、砂糖(めんつゆでも可)、八角、赤唐辛子、水を煮立てたものでさっと煮て冷ます。冷蔵庫で保存可能。夏の新定番としてお試しを。
ついつい飲み進めるうちに揚げ物が食べたくなって。
今宵の酒肴は紹介した茹でレタスと豚しゃぶ、キウイときゅうりのミントサラダ、枝豆の八角煮と、夏の宵にぴったりの3品。さて、この料理に合わせるお酒は?
「冷酒にしましょう。冷酒グラスに氷を入れて。日本酒に氷を入れるなんて! と昔はよく言われてましたけど、私は全然気にしません。好きに飲めばいいと思っているので」
晩酌で飲む量は日本酒なら1合、ワインならボトル2分の1本程度。愛酒家ではあるが大酒家ではない。
「おつまみと一緒に飲むのは日本酒かワインかジンのソーダ割りですが、口開けはハイボール。仕事終わりの区切りにまず泡でしゅわしゅわしたいので、薄いハイボールを飲みながらおつまみを作るんです。ひと口ハイボールを飲んだときが仕事終わり。私にとってはすごく大事な習慣です」
なるほど、黒いコースターの上のチェイサーは料理中に口にしていたハイボールでしたか。とはいえこれは、プライベートでの習慣。仕事で料理を試作するときにアルコールは口にしない。
「食材や調味料の分量などの数字を出さなきゃいけないので、お酒を飲みながらというわけにはいきません。でも晩酌のつまみは完全に自分のためだけの料理。そんなときは飲みながら気軽に作っています」
それにしても野菜たっぷりの超ヘルシーな3品。これで夕食終了なら太る心配とは限りなく無縁。
「それが飲み進めるうちに揚げ物をすることもあるんです。せっかく健康に配慮したおつまみを用意したのに、そのうち“やっぱり揚げ物だな”と自制がきかなくなっちゃう。ズッキーニをフリットにしたり、春巻きの皮があったら春巻きを作ったり。そういうときはたぶん、1合以上飲んでいて、かなり酔っ払っているから危険です(笑)。そうだ、これからアスパラとチーズの春巻きを揚げようかな。食べていってくださいね」
あれっ、井原さん、いつの間にか1合の片口が空っぽに……。
『クロワッサン』1097号より
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