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生前贈与や遺言…親の老後とお金のためにしておくべきこと。

親の老後とお金の問題解決には、親とのコミュニケーションと、知識の両方が必要。今から準備しておきたいことをファイナンシャルプランナーの内藤眞弓さんに聞きました。

イラストレーション・鈴木衣津子 文・阿部祐子

Q1.相続については兄妹でもよく話しています。 親が生前贈与について関心があるようですが、メリットは?

自分の存命中に子どもや孫に資産を贈与する「生前贈与」。原則60歳以上の父母または祖父母から、20歳以上の子または孫に財産を贈与する場合に選択可能となる

「相続時精算課税制度」を使えば、贈与の際にかかる税金を、相続時まで持ち越して精算できる。国としては、現役世代への資産移転を促す意味もある。

実は日本の相続税の課税件数は約8%と少ないが、資産家は「相続税対策」として生前贈与を行うケースもある。例えば、一人あたり年間110万円の贈与税の基礎控除額を毎年子や孫に贈与するといった方法だ。

しかし、内藤さんは注意を促す。

「想定外の長寿で、老後資金が足りなくなることも考えられます」

また、ネットなどに散見される相続対策のテクニックも、現時点で有効なだけで、将来的には無効になる可能性もある。無理は禁物だ。

Q2.定期預金や証券など、 親の財産については親しか把握していません。 今後、親がしておくべきお金にまつわる  “棚卸し”があれば教えてください。

親が亡くなった後、あちこちに分散している遺産の把握に遺族が四苦八苦するのは「相続あるある」だ。

「特に今の親世代は、銀行の破綻が懸念されていた時代を生きてきているので、多くの金融機関に預金を分散させている人も多いはずです」

資産運用が趣味という高齢者も増えている。ネット銀行やネット証券となると、把握はさらに困難だ。

「相続は先の話としても、年齢とともに多数の口座の管理は難しくなります。親自身もそれに気づいているはずなので、銀行なら2〜3行というように、管理できる数に徐々に減らしていきましょう」

どこと取引があるかは金融機関から届く郵便物でも把握できる。郵便物の整理を手伝って話のきっかけを作り、解約作業を手伝ってもいい。

「そうしたコミュニケーションは、親の経済状況を何となく知ることもでき、困りごとに気づきやすくなるというメリットもあります」

不便を感じながらも、口座の解約はおっくうになりがち。
不便を感じながらも、口座の解約はおっくうになりがち。

Q3. 兄弟姉妹で揉めないためにも、 遺言って必要でしょうか。 正直子どもからは言い出しづらいです。

相続の際、遺言がない場合は誰がどの財産を相続するかは、遺族間で話し合う。

「遺言を書くかはその人の価値観。でも遺族が困らないよう、財産リストは作成しておくとよいでしょう」

遺言では、具体的な遺産を誰に相続させるかといった内容が法定相続分に優先する。例えば遺族が配偶者と子ども2人の場合、配偶者2分の1、子ども4分の1ずつ、が法定相続分だ。

ただ、遺言書での配分に偏りがある場合、法定相続人は、法定相続分の半分を「遺留分」として請求できる(故人の兄弟姉妹を除く)。

遺言には、自分で作成する「自筆証書遺言」と、公証役場で作成する「公正証書遺言」がある。

前者には書き方を誤って法的に無効となる、しまい込んで発見されない、というリスクもある。後者には費用が発生するが、確実に遺言が残せる。作成には2名の証人が必要だが、公証役場で紹介してもらうことも可能だ。

遺言には「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類がある。
遺言には「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類がある。
  • 内藤眞弓

    内藤眞弓 さん (ないとう・まゆみ)

    ファイナンシャルプランナー

    生命保険会社を経てファイナンシャルプランナー(FP)に。独立系FP会社「生活設計塾クルー」のメンバーとして相談業務を行う。

『クロワッサン』1062号より

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