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管理職への昇進と更年期の症状が重なってつらい状況が続いています。【89歳の現役婦人科医師 Dr.野末の女性ホルモン講座】

産婦人科医師の野末悦子さんに教わります。

撮影・岩本慶三 イラストレーション・小迎裕美子 構成・越川典子

Q. 管理職への昇進と更年期の症状が重なってつらい状況が続いています。

25年勤め、ようやく課長職に就けました。希望したとはいえ、ストレスは予想以上です。50歳を目前にして、集中力がなくなったり、怒りっぽくなったり、以前の自分とは違うと感じています。女性の管理職は社内で2人目。ロールモデルはなく、体調の相談をする環境はありません。月経もほとんどなくなったので、我慢してやりすごせば、数年後にはトンネルを抜けられると思うのは楽観的すぎますか。(R・Yさん 48歳・会社員)

A. 女性医療は、ご自身で決めること。先を見据えて賢い選択をおすすめします。

ロールモデルもいない、相談場所もないのは、おつらいですね。更年期は、身体的要因・心理的要因・環境要因の3つが合わさり、一人ひとりが置かれている状況で、症状が出にくかったり、重くなったりもします。

女性の管理職率が高い諸外国では、更年期の体調不良が仕事のマイナスになることを嫌って、婦人科に相談し、ホルモン補充療法(HRT)など治療が必要ならばさっさと始める傾向があります。

R・Yさんも体調マネジメントをお考えになる時期ですね。婦人科、できれば更年期外来においでになることをすすめます。治療をするかしないかは、その後の選択です。

「やりすごす」ですか? 答えはNO! 
ことカラダについては、そんな考えは捨ててください。不調のかげに病気が隠れていることもあります。まずは、自分のカラダが今どのような状態なのか、客観的に診てもらうことが先決です。

職場で女性の健康のための取り組みは実施されていますか?

●妊娠や育児期に女性が働き続けやすい環境を整備している 9%
●女性従業員の状況や想いを正しく理解する取り組みをしている 4%
●婦人科検診や通院のため、制度が整っている 3%
●女性従業員が男性管理職と円滑にコミュニケーションが取れるような仕組みがある 3%
●女性対象の能力開発や管理職研修実施により、女性の活躍を推進する仕組みがある 3%
●女性の健康に関して、理解を深めるための社員研修が行われている 1%
●女性の健康について自己学習できるツールが用意されている 1%
●産業医に婦人科の医師がいる 1%
●託児所の設置やベビーシッターの利用支援制度がある 1%
●不妊治療の支援をしている 1%

全国の日本人女性35~59歳、約2400名のアンケートから、働く状況の厳しさが見える。大製薬「女性の健康に関する調査(2021年1月)」 女性の健康推進プロジェクトHPより

体調が整えば、仕事のストレスや日常生活の不安も減るでしょう。せっかく望んでつかんだ地位、ご自分の力を存分に発揮できるようにしていただきたいと願っています。

女性活躍推進を進める企業が増え、女性であることが不利益にならないよう、制度も見直されます。これからのR・Yさんの存在こそ、社内であとに続く女性社員のロールモデルになるのではないでしょうか。

更年期を過ぎても、65歳まで働く時代。完璧を目指すと自分にも厳しくなります。意識して時間を作り、リラックスしたり体を鍛えたりして、心身のバランスをとりましょう。マネジメントは長期戦ですよ。

※症状や治療法には個人差があります。必ず専門医にご相談ください。

カラダのマネジメントは長期戦と心得る。(Dr.野末)

管理職への昇進と更年期の症状が重なってつらい状況が続いています。【89歳の現役婦人科医師 Dr.野末の女性ホルモン講座】
  • 野末悦子

    野末悦子 さん (のずえ・えつこ)

    産婦人科医師

    横浜市立大学医学部卒業。川崎協同病院副院長、コスモス女性クリニック院長、久地診療所初代所長、介護老人保健施設「樹の丘」施設長などを歴任。

『クロワッサン』1056号より

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