「自分への投資」でお金が貯まらないタイプを、行動経済学で診断！

【自分への投資が言い訳】タイプ

●解釈レベル理論

自分への投資と称して何か始めるとき、思い出したいのが解釈レベル理論という法則。時間的に遠いことは理想や本質を見るのに対し、近いことは瑣末で現実的な面を見てしまうというものだ。

「例えばスポーツジムに入会するときは、未来の理想の体を思い描きますが、今日ジムに行くかどうかは、天候や気分に左右される。自分磨きには、そうした解釈レベルのギャップが生じやすい」

本来の目標を見失った途端、無駄遣いになると心得よう。

●ハロー効果

高級なブランド品を身につけていると、それだけで「この人はお金持ちなんだ」と思ってしまう。それはハロー効果によるもの。

「何かひとつ目立った特徴があると、ほかの評価まで引きずられてしまう現象のことをいいます」

一流の品を買うことで、このハロー効果を利用することもできる。ここ一番の場面で自分をアピールしたいなど、明確な目的を持って選んでいるのならメリットがあるものの、ただの気分的な選択だとしたら意味のない支出に。

なりたい自分になるための出費も、一流のものを買うことも、一概に無駄遣いとはいえない。本当に自分を磨くことができればいい出費になり、イメージした結果にならなければダメな出費。すべては結果次第！

そんなに無駄遣いしていないのに、お金が貯まらない。そう思っているのはあなただけではありません。

「無意識に繰り返している“クセ”に気づくことが、お金との付き合い方をあらためる第一歩です」

と話すのは、行動経済学に詳しい橋本之克さん。ビジネスや暮らしに役立つ実用的な学問として注目されている行動経済学とは、どんなもの？

「簡単にいえば、心理学と経済学を合わせた学問です。お金に関して、人は必ずしも合理的に行動するわけではありません。あまり深く考えずに衝動買いしたり、不要なものにも惰性でお金を払い続けたりしますよね？　そうした人間の“不合理さ”を解き明かしてくれるのが、行動経済学です」

ひとつ例を挙げてみよう。お腹が空いているときにスーパーに行って、予定外にたくさん買い込んでしまった経験はないだろうか。この行動には、現在の状態が将来もずっと続くかのように思ってしまう「投影バイアス」の法則が当てはまる。

ほかに、買ってきただけの既製品よりも、ひと手間かけて完成させた品のほうに愛着を感じやすい「IKEA効果」なんていうものも。時代とともにアップデートされている、生きた学問でもある。

行動経済学を知ると、お金にまつわる悪いクセは、たしかに無意識の深層心理からきていると納得。

「さまざまな法則を意識できるようになると、トラップに引っかかって損することを防げ、ひいては得することが増えます」と橋本さん。自分の不合理さを認めることで、ストレスが減って生きやすくもなるという。

「ダメな自分を認められれば、悪いクセが出そうになったときに、『あ、これは!』と気づいて踏みとどまれることもあるでしょう。反対に、不合理さを認められず『悪い消費じゃない』と自分に言い聞かせるのは、とても苦しく損をし続けることにもなります」

さらには身近な人への理解も深まる。夫の不可解な買い物に潜む心理だって、はたと理解できるかもしれない。

「お金は、稼ぐのと同じくらい使い方も大切なものです。それによって家族との関係や人生のクオリティまで変わってきます。お金の使い方をできるだけ間違えないための、“転ばぬ先の杖”として行動経済学を知っておけば、きっといいことがありますよ」

・間違った判断や罠にはまることを防げる

・損することが減り、得することが増える

・モヤモヤから解放されて生きやすくなる

・身近な人の価値観を理解できるようになる