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“いざというとき”を念頭にした、自衛隊式サバイバル片づけ術。4つの心得と7つのヒント。

規律を重んじる自衛隊では、片づけや整理整頓の訓練も必須。そしてその技術が有事の際に役立つという。そのノウハウとは?

撮影・黒川ひろみ イラストレーション・三東サイ 文・小沢緑子

「片づけの究極の目標はサバイバル」と言うのは、元自衛官で災害時にも役立つ片づけ術を紹介する畠山大樹さん。

なぜ自衛隊で片づけが必要に?

「たとえば、緊急時に隊員が装備の備品を1つなくしたとします。すると出動に手間取るだけでなく、それがきっかけで部隊の居場所を敵に特定されてしまうリスクもありえます。だからこそ、自衛隊では有事の際に生き残るための技術として、片づけや整理整頓も訓練に組み込んで徹底的に体に叩き込んでいくんです」

その技術は災害時も大いに役立つ。

「災害はいつ起こるかわからない。いざというときに備えて日頃から身の回りを片づけ、整理整頓しておくことは命を守ることに直結します」

今回、防災のために知っておきたい片づけの心得と具体策、さらに身につけると役立つヒントも教えてもらった。

《自衛隊で学んだ、片づけの心得。これだけは忘れるな!》

[心得1]〝本当に必要なもの〞を 選別し、あとは捨てる。

自衛隊の訓練所の宿舎では1人に与えられる収納はロッカーひとつと、ベッド下に置くボックスのみ。

「入隊時は隊員同士で文句を言っていましたが(笑)、1カ月もすると必要最低限のもので生活することが快適に感じられるように」(畠山さん)

日常生活で必要なものはそう多くない。むしろ少ないほうが探す手間がなくなり、片づけをする時間も短縮できて余裕が生まれることに気づいたのだという。

「防災面から見てもメリットが多い。モノが多い家より少ない家のほうが上からモノが落ちてきたり、床に散乱するリスクが減るので、よりスピーディーに逃げることができます。まずは家の中の要らないものを捨てることから始めてください」

【実践】
家の中のものを減らすためには自分なりの”捨てる基準”を設けることが大切。

「個人宅を訪問し片づけの仕事をしているとき、たとえば筆記用具なら同じボールペンが5本も6本も出てくることがあります。
理由を聞くと『捨てるのは惜しい』 『いつか使うかもしれない』からが多いのですが、それは要・不要の判断を先送りしているだけ。
『もったいない』が理由になったら捨てどき。自分の中ですでに不要と判断していると考えて、割り切って捨てましょう」

“いざというとき”を念頭にした、自衛隊式サバイバル片づけ術。4つの心得と7つのヒント。

[心得2]きれいな状態より”適所に収める”ことが大事。

部屋をきれいに見せることも大切だが、災害時に重要となるのが、モノを収納した場所をしっかり把握し、必要なときに必要なものを取り出せるようにきちんと整理しておくこと。

「その大切さを痛感したのが『台風』という訓練のときです。教官が抜き打ちで隊員の部屋に入り、ロッカーの中身をぶちまけたり、ベッドを倒してぐちゃぐちゃにして台風が通り過ぎた後のように荒らします」

その際、教官は釘1本など、何か細かいものを持ち出すという。

「戻った隊員は部屋を元どおりに片づけながら何が持ち出されたかを確認し報告しなくてはならないのですが、間違えたらやり直し。自由時間がどんどん少なくなるから皆、必死(笑)。どんなに小さいものも一つ残らず適所に収めて整理し、収納場所をすべて頭に入れるクセがつきました」

【実践】
所有するものをわかりやすく分類するには収納法を少し工夫しても。

「バッグならバッグ、ベルトならベルトとつい種類ごとに収納しがちですが、『よく使うもの』と『使わないもの』に分ける方法もおすすめです」

さらに「よく使うもの」は、一番取り出しやすい場所へ収納。

「取り出すときに棚全部をひっくり返さなくても済むので、部屋も散らかりにくくなります」

[心得3]片づけは歯磨き感覚でルーティン化。

「自衛隊の訓練所では大勢で共同生活を送るため、一日の行動が数分単位で細かく決められています。最初は大変ですが、一つ一つの行動をスケジュールどおりに何度もやり直し、反復させることで意識しなくても体が反応して動くようになります」

この”ルーティン化”が、片づけの技術を身につけるときにも大事。

「朝起きたらすぐにベッドを整える、着替えを取り出したらクローゼットの中のハンガーを整えるなど、日常の動作のついでに片づけや整理整頓も行うように意識づけを。
するとわざわざ片づけのためにまとまった時間を作らなくても部屋が自然と片づき、常にきれいな状態を維持できるようになります」

【実践】
「自衛隊では銃の扱い方も訓練しますが、肝心の演習中に弾づまりを起こさないように、使用した後は必ずパーツ一つ一つを分解して汚れを取り除き、最後の仕上げに銃身の中までライトで照らして念入りに点検します」

モノを使ったら、その後に片づけの一環としてメンテナンスを行うことも習慣化できれば万全だ。

「特にラジオ、ランタンなどの災害グッズはしまいっぱなしにしがちなので、棚を片づけたり整理するときに電池切れになっていないか定期的にチェックすることを忘れずに」

“いざというとき”を念頭にした、自衛隊式サバイバル片づけ術。4つの心得と7つのヒント。

[心得4]モノの配置がいざというとき命を守る。

「今回の片づけ術を紹介する一番の目的が、災害時にどんな状況になっても生き残る確率を上げることです。そのためにも、家の中にあるものの配置を今一度見直してほしいと思います」

まずは災害時の避難口となる玄関や庭に面した窓の近く。観葉植物も含めて大きなものや荷物を置いていたら片づけよう。

家具の配置も重要。地震の際に倒れて進路を塞いだり、扉側に動いてドアが開かなくなることもあるので、

「基本的に家具は壁につけ、避難口に至るルートには絶対に置かない。災害時は予期せぬことが起こるので、普段から万が一のことも念頭に置いてモノの配置を考えましょう」

【実践】
「自衛隊はシミュレーションのプロで、いつなんどきでも何かが起きたらすぐに対応できるように備えています」

夜中の非常時に対応するための訓練が「非常呼集」。就寝中でもラッパの音が鳴り響いたら必要な装備を背嚢に入れて集合場所に駆けつける。

「停電時も素早く出動できるように、ベッドの脇には懐中電灯と靴。それ以外のものは障害物となるので一切置きません」

夜中に災害が起きることも想定し、ベッド周辺も片づけておこう。

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