「冷え」の漢方薬選びは不調の原因によって変わる。
イラストレーション・宇和島太郎 文・馬場さおり
【冷え】手足・足先が冷たい、体が冷えやすい、寒さによる体の冷えに。
<定番>一昔前までは冷えと言えば、しもやけだった!
屋外での活動が多かったり、屋内で暖を取る手段が火鉢だったりした、一昔前の冬。寒さによって血行が悪くなることで起こる「しもやけ」が、手足の冷えのイメージでした。飽食時代の今とは異なり、食べるものが限られていたこともあって、血液量が足りなかった昔の人は特にしもやけになりやすかったと言えます。
そんな冬の風物詩をケアしてくれる漢方薬として活躍したのは『当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)』。
この漢方薬は血液の巡りの改善にアプローチしてくれるだけでなく、血液自体の増量作用も期待できるうえ、胃腸機能のケアもかなえてくれる優れた存在。冷えでかじかんだ手足を温めてくれる頼れる味方だったのです。
<でも、こんな場合は> 「手足は冷えるのに顔はのぼせるのがスマホ疲れの特徴」
スマホやネットサーフィン、デスクワークなどで脳と神経を酷使している現代人は、常に交感神経が興奮している状態です。
交感神経が高ぶっていると末梢の血管が収縮するため、手先や足先への血液の流れが悪くなり、末端が冷えてしまいます。同じ手先の冷えでも、寒さによる血行不良で起こるしもやけとは、性質が異なるのです。
また脳と神経を使い続けていることから、頭はのぼせやすくなります。こんなときは交感神経を落ち着かせ、末端の血管の収縮を緩める作用が期待できる『加味逍遙散(かみしょうようさん)』を試してみましょう。
寒さによる冷えやスマホ疲れによる冷え以外に、冷たいものを飲食することで起こる冷えには『安中散』がおすすめ。冷えてしまったお腹を温めてくれます。
<冷えには>購入できる漢方薬
当帰四逆加呉茱萸生姜湯エキス錠N/ジェーピーエス製薬 第2類医薬品
寒冷刺激が引き金で起きるしもやけや、下腹部の痛み、腰の痛み、頭痛などに効果があり、手足の末梢血管の血行の促進にアプローチして、冷えの症状を改善する手助けを行います。
加味逍遙散エキス顆粒〔東洋〕 分包/イスクラ産業
神経からくる様々な不調のケアに働く加味逍遙散は、のぼせ感や冷え、肩がこり、疲労感、イライラ、便秘などの症状を和らげるためにアプローチ。また、女性ホルモンの変動にともなう精神神経症状のケアに。
「クラシエ」漢方安中散料エキス顆粒/クラシエ薬品
体力があまりなく、胃痛または腹痛があって、ときに胸やけやげっぷ、食欲不振、吐き気などをともなう人の神経性胃炎、慢性胃炎に効果があります。冷え食材によって冷えてしまったお腹まわりにも効果が期待できます。
『Dr.クロワッサン 不調が消える、ふだん漢方』(2020年1月28日発行)より。