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インフルエンザと新型コロナウイルス感染症、その特徴と違いを医師に聞いた。

感染症は見分けにくいことは確かですが、感染経路は共通していることが多いのです。
インフルエンザと新型コロナウイルス感染症、現時点でわかっている特徴や違いを呼吸器内科医の石田直さんに聞きました。

文:及川夕子 イラストレーション:松元まり子

感染経路を、改めて教えてください。

新型コロナもインフルエンザも飛沫感染。
新型コロナもインフルエンザも飛沫感染。

「インフルエンザの年間感染者数は、通常なら1千万人ほど。今年は予測がつきませんが、同時流行の場合、発熱の患者さんが増えるでしょう」と石田さん。

「ウイルスは、粘膜などから細胞に侵入して増殖します。気管支や肺の細胞に侵入した場合、受容体というところにくっついて細胞を障害しながら増殖していきます。その結果、咳や呼吸困難、発熱などさまざまな症状が現れます」

まず感染経路についてですが、インフルエンザも新型コロナも、主に飛沫(ひまつ)感染と接触感染の2つとされています。

ウイルスの多くは、感染者のつば、咳、くしゃみの飛沫を吸い込むことやウイルスが付着したものを触った手指で口、鼻、目の粘膜を触ることでうつります。当然ながら、人混みや満員電車、繁華街など、さまざまな人が集まる場所ではウイルスに触れる機会が増えます。感染対策を万全に。

新型コロナは発症前でも感染リスクがある。

インフルエンザ、新型コロナの症状は、似ているところもありますが、違いもあります。

体内に侵入したウイルスは、体の中で増えていきます。この期間のことを潜伏期間と言いますが、インフルエンザは、潜伏期間が1~2日、突然の高熱(38度以上)や筋肉痛がメインの症状となり、5~7日程度で軽快します。また早期診断、早期治療で、感染拡大を予防できる疾患です。

対して新型コロナは、37.5度以上の発熱や味覚障害・嗅覚障害が典型的な症状。潜伏期間は1~14日(平均5~6日)。重症化する場合、発症から1週間前後で咳や呼吸困難などの肺炎症状が強くなることがわかってきました。一方で新型コロナは、感染者の8割ほどが無症状か軽症です。

感染していれば症状がなくてもウイルスは体内で増殖します。新型コロナでは、発症の数日前からウイルスが気道に多く存在し、発症直前に最大量となって感染力が強くなります。感染に気づかずに活動してしまうことで、感染が広がりやすいのです。

「ですから、いまはみんなで感染対策を続けることが最善の策。同時に安心して暮らしていくためにも、感染した人を責めないことも大切でしょう。咳や発熱、だるさなどがあったら、病気や感染症の可能性があると考えて早めの受診を勧めます。できることは決まっています。ウイルスは口や鼻や目などから体に入らなければ、感染はしません。怖がらずに、やるべきことを続けていきましょう」

【インフルエンザと新型コロナウイルスの違い】

インフルエンザと新型コロナウイルス感染症、その特徴と違いを医師に聞いた。

●新型コロナウィルス

【症状の有無】
発熱に加えて、味覚障害・嗅覚障害を伴うことがある。

【潜伏期間】
1-14日(平均 5.6日)

【無症状感染】
数%~ 60%
無症状患者でもウイルス量は多く、感染力が強い。

【ウイルス排出期間】
ウイルスの遺伝子は長期間検出するものの、感染力があるウイルス排出期間は10日以内。

【ウイルス排出のピーク】
発症日。

【重症度】
重症になりうる。

【致死率】
3~4%

【ワクチン】
開発中であるものの、現時点で有効なワクチンは存在しない。

【治療薬】
軽症例については、確立された治療薬はなく、多くの薬剤が臨床治験中。

【急性呼吸不全(ARDS)の合併】
しばしば見られる。

インフルエンザと新型コロナウイルス感染症、その特徴と違いを医師に聞いた。

●インフルエンザ

【症状の有無】
ワクチン接種の有無などにより程度の差があるものの、しばしば高熱が出る。

【潜伏期間】
1- 2日

【無症状感染】
10%
無症状患者では、ウイルス量は少ない。

【ウイルス排出期間】
5 – 10 日(多くは5-6 日)

【ウイルス排出のピーク】
発症後 2、3日後。

【重症度】
多くは軽症~中等症。

【致死率】
0.1%以下

【ワクチン】
使用可能だが季節ごとに有効性は異なる。

【治療薬】
オセルタミビル、ザナミビル、ペラミビル、ラニナミビル、バロキサビル マルボキシル

【急性呼吸不全(ARDS)の合併】
少ない。

「日本感染症学会提言 今冬のインフルエンザとCOVID-19 に備えて」をもとに作成。

インフルエンザと新型コロナウイルス感染症、その特徴と違いを医師に聞いた。

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  • 石田 直

    お話を伺ったのは

    石田 直 さん (いしだ・ただし)

    呼吸器内科医

    倉敷中央病院副院長兼呼吸器内科主任部長。京都大学医学部卒。呼吸器感染症を専門として診療を重ねる。
    京都大学臨床教授。日本感染症学会インフルエンザ委員会委員長・インフルエンザ/ COVID-19 アドホック委員会委員長。「院内肺炎ガイドライン」作成委員。

『Dr.クロワッサン 新型コロナ インフルエンザ 感染症に負けない、カラダをつくる。』(2020年11月30日発行)より。

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