腸が元気ならば脳は機嫌よくいられて、あなたの健康を守ってくれます。
文・韮澤恵理 イラスト・安ケ平正哉 撮影・青木和義
腸が元気ならば脳は機嫌よくいられて、あなたの健康を守ってくれます。
腸の調子が悪くなる原因は冷え、細菌感染などさまざまです。でも、病気ではないけれど、いつも腸の調子が悪いという人がいます。その腸の不調の原因は何でしょう?
「ずばり自律神経の乱れが原因ですね。交感神経が優位に傾いて、消化に手が回らなかったり、消化器官の血流が悪くなっているのです」
と教えてくれたのは、自律神経研究の第一人者、小林弘幸さんです。
自律神経という言葉、よく聞きますが、どんな働きをしているのかよくわかりません。
「心拍や消化など、人間の意思に左右されずに体を動かすのが自律神経です。交感神経と副交感神経があり、体が緊張モードと休息モードを行き来するように調整しています」
交感神経は活動のための神経で、体が緊張した状態です。呼吸が浅く、心拍も高まり、状況にすぐに対応できる戦う態勢といえます。逆に副交感神経はリラックスモード。深い呼吸で体温も下がって眠くなり、体を休め、細胞を再生したり、消化を行う状態です(下「自律神経のバランスと体」参照)。
「交感神経と副交感神経の切り替えが体調を左右します。2つがしっかりと切り替わり、どちらも十分に働くのが理想。どちらかに偏ると、体はトラブルを起こします。やっかいなのは、脳のコントロールによって睡眠中も影響を受ける神経なので、自分の意思でどうにもならない点です」
だから自律神経を整えるさまざまな方法が話題になるわけです。
自律神経のバランスと体
●交感神経優位
[呼吸]浅く速い呼吸になる。
[血圧]血管が収縮し、上がる。
[消化機能]抑制。
[免疫力]高まる。
●副交感神経優位
[呼吸]ゆっくり深い呼吸になる。
[血圧]血管が拡張し、下がる。
[消化機能]促進。
[免疫力]低くなる。
脳は第二の腸、脳への情報で 自律神経のバランスをとる。
「現代生活では交感神経が優位になりがちで、そのために、よく眠れない人、体のサイクルが乱れてしまっている人が多い。それで副交感神経に依存する消化器に不調が出てくるのです。便秘外来で腸の調子が悪い人を診ていると、不規則な生活が原因と思われる人が少なくないですね」
自律神経の状態は大本の脳が管理しているのですね。
「そうとも限らないのです。最近では体の各部から脳に送られる情報で、脳の状況が左右されることがわかってきています。なかでも腸と脳は強いきずなで結ばれていて、腸の異変が脳の不安を引き起こすこともわかっています。これはほかの臓器では見られないことで、それだけ腸と脳は特別な関係なんです」
それが脳腸相関と呼ばれるもので、「腸はよく『第二の脳』といわれますが、実は『脳が第二の腸』です。腸のコンディションをよくすれば、脳がその情報を受け取り、自律神経が整うということも証明されています。『栄養を吸収し、老廃物を排泄する生命の要の腸の調子がいい』とわかると脳が安心し、ほかのことに手が回るわけです」
腸の調子を整えれば、自律神経のバランスがよくなり、健康な生活が送れるのですね。
『Dr.クロワッサン 名医が教える腸ストレッチで、自律神経はよみがえる。」(2019年1月15日発行)より。