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ストーリーこそ映画の生命だと確信している――ゴア・ヴィダル(作家)

1977年創刊、40年以上の歴史がある雑誌『クロワッサン』のバックナンバーから、いまも心に響く「くらしの名言」をお届けする連載。今回は、アメリカを代表する作家の言葉から映画の魅力を考えます。

文・澁川祐子

1979年2月10日号「プチ・クロワッサン」より
1979年2月10日号「プチ・クロワッサン」より

ストーリーこそ映画の生命だと確信している――ゴア・ヴィダル(作家)

ゴア・ヴィダル氏(1925-2012)は、小説から脚本まで幅広く手がけたアメリカの作家。戦後まもない1948年にいち早く同性愛を肯定的に描いた小説『都市と柱』で注目を集め、その後もトランス女性を主人公にしたコメディ『マイラ』(1968)、長編歴史小説『リンカーン』(1984)など多様な作品を残しました。

〈各方面にわたる鋭い論評で常に物議をかもす、現代アメリカの、代表的知識人の一人〉と紹介されているように、「作家ゴア・ヴィダルのシネトーク」と題する当記事でも毒舌が炸裂。

〈今日の映画監督はほとんど物語を語れない連中〉
〈私に言わせれば監督なんてゆすり屋の盗作屋だね〉

きつい言葉だけに少々説明が必要ですが、ヴィダル氏が痛烈に批判しているのは、脚本を書かない、いわゆる職業監督のこと。イングマール・ベルイマンやジャン・コクトー、フランシス・コッポラといった脚本と監督の両方を手がける人物のことは高く評価しています。

そこでつながるのが、ストーリーの大事さを訴える今回の名言。ただし話の筋は必ずしも〈初めと真ん中と終わりがあるべき〉という、一般的な「三幕構成」の順である必要はなく、〈肝心なことは面白くなければならないということだ〉と語っています。

昨今の日本映画界では、ヒットした小説や漫画を題材にした原作ものにくらべ、オリジナル脚本の作品が制作しにくいと言われています。もちろんどちらがいいとは一概に言えませんが、この巨匠の言葉は、映画ならではのストーリーとは何かという問いをあらためて突きつけているといえるでしょう。

※肩書きは雑誌掲載時のものです。

澁川祐子(しぶかわゆうこ)●食や工芸を中心に執筆、編集。著書に『オムライスの秘密 メロンパンの謎』(新潮文庫)、編著に『スリップウェア』(誠文堂新光社)など。

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