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子どもはかりそめの旅人――俵萠子(評論家)

1977年創刊、40年以上の歴史がある雑誌『クロワッサン』のバックナンバーから、いまも心に響く「くらしの名言」をお届けする連載。今回は、離婚経験者の生の声から、真の「自立」を考えます。

文・澁川祐子

1978年11月10日号「離婚の流行学」より
1978年11月10日号「離婚の流行学」より

子どもはかりそめの旅人――俵萠子(評論家)

「離婚の流行学」というタイトルに何やら不穏なものを感じますが、内容はいたってまじめ。諸外国の離婚事情を紹介したり、離婚にまつわる法律を解説したり。はたまた離婚を構造心理学から読み解いたりと、離婚率が年々増加していた当時において、離婚を多角的に論じようと試みる意欲的な記事です。

今回の名言は、そのなかで離婚経験者の談話として語られたひと言。発言者は、女性や家庭、教育を中心とした評論で活躍した俵萠子(1930-2008)さんです。ニュースキャスターで知られる俵孝太郎さんと結婚し、1男1女をもうけ、16年の結婚生活ののちに離婚。子どもを引き取って育てました。

離婚を振り返って、<収入は夫より多かったし、結婚前から自立を考えていたので、離婚したからといってとくに新しい人生計画があったわけではありません>と、潔い俵さん。子どもに対しても、<子どもは一時預かりみたいなもので、しょせん人間は一人でしょう>と言い切ります。

子どもは、いずれ自分のもとから旅立っていくもの。だから<かりそめの旅人>であって、<私の人生にとって、本質的に重大な部分を占めるものではない>。

夫がいようが、子どもがいようが、自分の人生の舵は、自分で握る。そんな確固たる意志がにじむ言葉に、どんなときも自分の足で歩むことの確かさを忘れずにいようと、背筋が伸びる思いでした。

※肩書きは雑誌掲載時のものです。

澁川祐子(しぶかわゆうこ)●食や工芸を中心に執筆、編集。著書に『オムライスの秘密 メロンパンの謎』(新潮文庫)、編著に『スリップウェア』(誠文堂新光社)など。

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