岸本葉子さんが人生の後半が始まったと実感したのは、介護の末に両親を相次いで見送ったあたり。
「虚脱感の中にも、肩の荷を下ろしてホッとする感じがありました。そんなふうに一つの時代の終わりを感じるのは、体の無理が利かなくなった時、子どもが結婚した時、定年が視野に入ってきた時など、人それぞれですよね。その頃、誰しも体力の衰えは感じるし、これまでにないミスを多発したり、ネガティブな面はあります。でも、人生後半は終わりに向かっていくだけではない。未知のこともたくさん待ち受けていて、好奇心が湧き、ワクワクする体験もいっぱいできるのだ、と60歳を目の前にした今、私自身が日々の中で感じています」
年を重ねると「私には向かない」と思って受けつけないことが多くなるもの。
「でも、いざやってみると意外に楽しかったり、予想外の展開もあるんです。私にとってはズンバとの出合いがそう。ラテン系のダンスエクササイズなんですが、以前から私を知っている人は、ズンバがどういうものかわかると心底驚きます。リズム感ゼロで、若い頃はダンスなんて遊び人のすること、と決めつけていた堅物でしたから(笑)」
そんな岸本さんが1年ほど前、ジムの筋トレマシンに飽きていた頃、たまたまレッスンに参加してその楽しさに開眼。
「リズムに合わせてひたすら体を動かす快感、頭が空っぽになる心地よさを味わい、もしかして私はダンスが好きだったのかも、と思えるほどハマりました」
ズンバに合わせたウエアも、これまでの人生では着たことのない大胆さ。
「背中をパックリと出して、ショッキングピンクのブラトップをつけて踊っているなんて、40代の私が見たら卒倒するかも(笑)。でも新しいファッションを身につけると、新たな自分を見つけられます。60代、70代になった私も、今の想像を超えているかもしれませんね」