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【後編】91歳で講義に立ち続ける東城百合子さん。その元気の源を聞く。

自然食と自然療法によって大病を克服したという東城百合子さん。献立の組み立て方やこだわりの調味料を聞きました。
  • 撮影・小出和弘 文・後藤真子

どんなふうに暮らしていたら、こんなに元気でいられるのだろう。東城さんに尋ねると、実は、若いころに大病をしたのがきっかけで、自然食を実践し始めたという。

「24歳のとき、結核にかかりました。栄養をとらなくてはと、卵や肉、牛乳などの動物性のものをせっせと摂取したんですが、一向によくならない。重症の結核で肺に穴があいて、呼吸困難になっていました。その頃出会った医師に、たんぱく質を摂るのではなく、ビタミン、ミネラルの豊富な玄米食がよいと勧められたんです」

玄米食に切り替え、山菜、発酵食品などを積極的にとるようにした。こんにゃく湿布がいいと聞けば、こんにゃくを煮てタオルなどでくるんで体にあてて温めた。それでも冷えるときは、しょうが湯をタオルに浸してて腹と腰に巻いた。やがて呼吸困難は治まり、食欲が出て、29歳のときに結核は治癒した。自らが体験し、病を克服した自然食と自然療法の力。それを他の人にも伝えたいという強い思いが、いまも東城さんの原動力になっている。

「いまでも、体が弱ったときはこんにゃくの温湿布やしょうが湯の湿布をしています。毎日やっているのは、びわの葉の温灸です。おなかの、とくに肝臓、腎臓、脾臓のある場所と、自分の体の悪いところにびわの葉を当て、火をつけたもぐさで上から温めるの。びわの葉のエネルギーがじわーっとしみてきます」

こんにゃくの温湿布、しょうが湯の湿布、びわの葉の温灸のやり方は、著書『家庭でできる自然療法』に詳しく出ている。いずれも「疲れない程度、気持ちよくなる程度に行うのがこつ」という。

「とにかく、実践してみなくちゃ。自然療法は体で学ぶんです。人が言うからじゃなくて、自分の体が納得するように行うの。やってみれば、体が教えてくれますよ」

玄米ご飯を主食とし、 1日2食を 60 年以上。

東城さんは、長男夫婦と孫3人との6人暮らし。その一日は、一家で神棚に挨拶し、仏壇に般若心経をあげることから始まる。その後、家族は朝食をとるが、東城さんは、朝は梅干しと番茶だけ。

「私は1日2食なの。結核が治癒してから60年、ずっとです。そんなにいっぱい食べなくても大丈夫。いまの人は食べすぎなんですよ」

そして、家で原稿を書く日以外は出勤し、午前の料理教室での講義を終えたら、事務所でスタッフと一緒に昼食をとるのがいつものスタイル。この昼食が「あなたと健康社」ならではの日課のひとつ。スタッフが一品ずつ手料理を持ち寄り、盛り合わせてみんなで食べるのだ。

「自分で作ったものを持ってくるのが、うちの規則。それぞれ、面白い料理がありますよ。お互いにそれを見て、料理を覚えるの。働きながら当番で玄米を炊いて、一緒に食べます。お互いに協力して、励まし合ってやっていこうということです。一緒に食べるのが一緒に生きるということ。それがうちの精神なんです」

この昼食が東城さんの一日の食事のメインとなっており、夜は軽めに済ませる。どちらにも共通しているのは、主食の玄米ご飯に、ミネラル豊富な自然塩を少量加えたすりごまをたっぷり食べること。

昼食の一例。主食の玄米を多種の惣菜で、しっかり。

1日2食のうち重点は昼食に。玄米ご飯に自然塩を足したすりごまと梅干しを添えるのは定番。持ち寄りの惣菜は一皿に盛り合わせる。

夕食の一例。一汁三菜と 玄米ご飯を軽めの量で。

昼よりも夕食は軽め。写真のおかずは麩のロースト(麩や野菜を自然卵、だし汁と合わせ焼いたもの)、青菜のごま味噌和え、たくあん。

調味料にはこだわり、 野菜は皮まで使い切る。

調味料は重要だ。添加物を避けるのはもちろん、味噌や醤油、酢、梅酢は自然醸造のものを使い、塩も自然塩。油は天然搾りの植物油といった具合に、できる限り化学的ではないものを選ぶ。また、「塩はないと生きられないけど、砂糖はなくても生きられます」と話すとおり、食材の甘味を生かして砂糖は控える。どうしてもという場合は、白砂糖は避け、黒砂糖やみりんなどを用いる。

「食べ物は天からいただいたもの。野菜は皮だって全部使います」

料理教室でも、捨てる野菜くずはごくわずか。玉ねぎの皮は茶葉に、じゃがいもの皮は揚げてチップスにと、工夫して使い切る。

「生活をするというのは、食べること。ただ食べるのじゃなく、自分で手を使って命をいただくの。私はもう90代だけど自分の部屋くらいは片づけます。自分で動いていれば神経だって動くし、人のために喜んで働き、話していれば頭の回転はよくなります。毎日ここで喋っているからこんなに元気なのよ」

自然醸造にこだわった 醤油や酢、梅酢。

醤油や酢をはじめ塩、油まで調味料は伝統的な製法のものを選ぶ。

かつお節や昆布でとる 昔ながらのだしが一番。

使うたびに削るかつお節。和風カレーにこのまま入れて食べる。

だしがらは無駄にせず、ひと手間かけて味わう。

だしがらの煮干しを乾燥させたもの。このまま食べても美味しい

毎日玄米を美味しく健康的に食べるために。

梅干し、たくあん、味噌等は少量でも毎日口にすると腸が元気に。

野菜は葉と根、淡色と緑黄色を取り混ぜて使う。

青菜や人参はビタミン、根菜はミネラルが多い。意識して両方とる。

東城さんが毎日欠かさず行うびわの葉を用いた温灸。

肌の上にびわの葉と布や紙を重ね、火をつけた棒もぐさで温める。

野菜の皮や切れ端は、なるべく捨てず再利用。

玉ねぎの皮は干して茶葉に。他の野菜くずも極力工夫して生かす。

『クロワッサン』949号より

●東城百合子さん あなたと健康社 主幹/自然食・自然療法研究家。著書『家庭でできる自然療法』は昭和53年の初版以来、宣伝なしで100万部を超えて読み継がれている。

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