くらし

福田里香さんが訪問。奈良の石村由起子さんが改修した、野花に囲まれた小さな一軒家。

  • 撮影・青木和義 文・大和まこ

石村さんが用意した食材で福田さんが作る、即興性が楽しい朝食。

左手前のガラスのポットにはハーブウォーター。『くるみの木』の元スタッフが全国各地から送ってくれる手作りパンも石村家の朝食には欠かせない。

早速、新しい家で一晩を過ごした福田さん。翌朝はお礼の朝食を作ることに。石村家の冷蔵庫の中から、まず取り出したのは奈良の名産のひとつ、古都華(ことか)という名のいちご。白味噌を加えたクリームチーズで和えて、おやつのような一品が完成。もう一品は「まるでお庭のよう!」と石村さんが歓声をあげたハーブや花もたっぷりのグリーンサラダ。

チーズには福田さんが持参したお手製、大和橘の花びらのレバノン風ガルニチュールを添えて。

「可憐な花が咲いた大和橘をいただいた時、里香ちゃんの顔が浮かんで送っちゃった」と石村さん。可愛らしい花は素敵な手土産に姿を変えて、奈良へと戻ってきた。もうひとつ、福田さんの手土産はエルダーフラワーで作ったピンクのコーディアル。

白味噌の塩気が味のアクセントに。
サラダにはたっぷりのチーズを。
エルダーフラワーのコーディアル。
『鹿の舟 囀(さえずり)』に隣接する畑で収穫した大根。

「鳥がやってくる庭を眺めながらの朝食は、本当に贅沢」と福田さん。

 年齢的なこともあり見直すことになった石村さんの暮らし。

「暮らしを心地よく、幸せにするのは自分しかいない。これから始まる見通しのいい、気持ちのいい毎日がとても楽しみ。振り返ってみると50代はまだ無我夢中に仕事をしていて、そう考えるようになったのは60になってから。40代をどう生きるかでいい50代になるし、60代もそう。今日が明日を作るのね」

「由起子さんの魅力は青春時代に自分が獲得した価値観にとどまらず、常にアップデートしているところ。終活じゃないけれど、晩年をどう暮らしたいか。若いころは目いっぱい広げていたものを程よく畳むって、意外とできないことだと思う」と福田さん。

「残りの人生、何年あるかわからないし、一年を一生懸命生きてそれが楽しかったらいいじゃないって。自分が幸せだと人にも優しくできますし」

「由起子さんには大人の可愛らしさを感じます。発酵したオリーブ?」と福田さん。仲の良さを感じさせるやりとりが続く。
テラスに座って暮れゆくひと時を楽しむ石村さん。

石村由起子(いしむら・ゆきこ)さん●35周年を迎えたカフェ『くるみの木』をはじめ、奈良と東京で4店舗を展開。高松「まちのシューレ963」などのプロデュースも。

福田里香(ふくだ・りか)さん●菓子研究家として雑誌や書籍などを中心に活躍。『いちじく好きのためのレシピ』(文化出版局)など、レシピ本やエッセイ多数。

『クロワッサン』1001号より

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