くらし

ばあちゃんも母さんも、みーんな女子高生だった。│金井真紀「きょろきょろMUSEUM」

俳句を作って遊ぶとき、いつも思う。これは窮屈な決まり事があるから楽しいのだ、と。たった十七文字しか使えない上に、季語を入れろって、どんだけ厳しい制約なのさ。と呆れつつ、その制約下でなんとかおもしろい句を捻り出そうとする。それが楽しい。つまり人は、制約があるから工夫するのだなぁ。

ニッポンの制服100年を振り返る展覧会は、多くの元・女子学生たちで賑わっていた。もちろんわたしもその一人で、「そうそう、この頃のヤンキーはスカートが長かったんだよね」「わー、懐かしいソックタッチ!」「いたねぇ、ガングロ」「最近の子は、ローファーじゃなくてスニーカーなのかぁ」と大騒ぎ。

セーラー服の登場(1920年頃)、タータンチェックのスカート導入(’82年)といったダイナミックな流れも興味深いけど、ソックスの丈や、色や膨らみや着こなしが細かく移ろうディテールがたまらない。そうだった、女子高生のおしゃれはディテールへのこだわりなんだった!と往時の情熱が蘇ってくる。無味乾燥な紺色のカーディガンをどう着崩すかの工夫、学校指定のカバンに似て非なるカバンを探す苦労、先生に「癖っ毛です」と言い張れるギリギリゆるいパーマの研究……。

制約の中でどれだけ個性が出せるか、どれだけ好きな自分でいられるかの勝負。制服のおしゃれは、俳句で遊ぶ感覚にちょっと似ている。なーんて感慨を抱いている時点で、思えば遠くへ来たもんだ。わたしも順調にババアになった。

『ニッポン制服百年史ー女学生服がポップカルチャーになった!』
弥生美術館(東京都文京区弥生2-4-3)にて6月30日まで開催。100年前の洋装女学生服をはじめとした多くの制服の実物展示と作家によるイラストで変遷を紹介。TEL.03-3812-0012 10時〜17時 月曜休館 料金・一般900円

金井真紀(かない・まき)●文筆家、イラストレーター。最新刊『サッカーことばランド』(ころから)が発売中。

『クロワッサン』997号より

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