サザエさんちの卓袱台を フィールドワークする。長谷川町子美術館『長谷川町子原作展「磯野家の食卓」』│金井真紀「きょろきょろMUSEUM」 | アートとカルチャー | クロワッサン オンライン
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サザエさんちの卓袱台を フィールドワークする。長谷川町子美術館『長谷川町子原作展「磯野家の食卓」』│金井真紀「きょろきょろMUSEUM」

10数年前、映画『ALWAYS 三丁目の夕日』の制作を手伝った。リサーチャーという肩書きだったわたしに与えられた任務は、映画の舞台となった昭和33年の東京について調べること。銀座の写真を集めろーとか、当時の電車の切符は何色か?とか、様々な宿題が降ってきた。

なかでも気合が入ったのは「集団就職で上京してきたろくちゃんが憧れていた東京のお菓子を探せ」というお題。しかも脚本では、ろくちゃんは古くなったそのお菓子を食べてお腹を壊すという設定だ。①昭和33年に②東京にだけ存在した③日持ちしないお菓子。わたしは老舗の洋菓子店を片っぱしから当たり、条件を満たすものを探しまくった。図書館で文献をひもとくよりも、街で体験談を拾い集める「地べたの調べ物」が好きだったわたしにとって、テンションが上がる仕事だったなぁ。

なーんて記憶がふと蘇ったのは、昭和21年から49年まで新聞連載された漫画『サザエさん』の食卓をのぞいたせい。そこには庶民の食の現代史が生々しく刻まれていた。戦後すぐは「代用食」とか「人造米」なんてワードが出てくる。30年代になると「冷蔵庫」の普及率がググッと上がり「クリスマスケーキ」が登場。そして「食品添加物」や「残留農薬」の問題が語られる。あぁ、まさに『サザエさん』は地べたの情報の宝庫なのであった!

ちなみに、わが調査結果が反映されて『三丁目の夕日』の脚本に書き加えられた、ろくちゃん憧れのお菓子はシュークリームでした。

『長谷川町子原作展「磯野家の食卓」』
長谷川町子美術館(東京都世田谷区桜新町1-30-6)にて11月25日まで開催。『サザエさん』を通して戦後の日本の食生活の変遷をたどる。『収蔵コレクション展「秋の贈り物」』も同時開催。03-3701-8766 10時~17時30分(最終入館は17時) 月曜休館 料金・一般600円

金井真紀(かない・まき)●作家、イラストレーター。最新刊『サッカーことばランド』(ころから)が発売中。

『クロワッサン』984号より

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