くらし

【紫原明子のお悩み相談】3歳の甥っ子を亡くしました。

『家族無計画』や『りこんのこども』などの著書があるエッセイストの紫原明子さんが読者のお悩みに答える連載。今回は幼い命が失われ、なげく両親や兄夫婦をどう元気づければいいか悩む女性からの相談です。

<お悩み>
こんにちは。 先日、3歳の甥っ子(兄の子)を亡くしました。もともと体は弱かったものの、突然のことでした。
兄夫婦は実家から徒歩数分のところに住んでおり、私はそこから電車で2時間弱のところに一人暮らしをしています。 兄夫婦や、いつもすぐ近くで支援をしてきた両親の悲しみは深く、そんな中で私ができることが何かないかと思っています。
兄のところはほかに2人子供がいるため兄と兄嫁の2人で何か気晴らしにというわけにもいかなそうです。 また、叔母という立場で色々と介入するのも兄嫁の気に触ったりしないかと気になっています(兄嫁とは特段仲がいいわけではないですが、悪くもないです)。
何か行動したり、元気の出る贈り物をしてあげたりしたいのですが、客観的なアドバイスを頂けないでしょうか。(相談者:鶴子/女性。20代後半、独身、会社員)

紫原明子さんの回答

鶴子さん、こんにちは。
鶴子さんも、ご家族のみなさんも、つらい経験をされたんですね。そんな中で、ご家族のためになにか自分にできることを、と考えられている優しい鶴子さん。その存在はすでに、ご家族にとっても十分に大きな支えになっているのではないでしょうか。

とはいえ、なにかしてあげたい、一日も早く立ち直ってほしいと思わずにはいられない気持ちもとてもよくわかります。

私の家族も以前、大きな葛藤を抱えました。鶴子さんのご家族のように、取り返しのつかない喪失が原因ではなかったけれど、本人はとても苦しかっただろうと思います。その際、私もやっぱり、話を聞いたり、励ましたり、気晴らしの機会を作ってみたり、プレゼントを渡してみたり。あの手この手で本人の再起を試みました。でも、こちらが願うようにその瞬間からパッと立ち直る、というようなことは残念ながら起きず、本人が悩み苦しんでいる間中、私の視界も常にどこかもやがかかったように晴れることはなく、このままでは遅かれ早かれ私の気も滅入ってしまうな、と思っていました。

だけど、幸いにも私の家族はある時期から急に立ち直って、今ではすっかり元気に暮らしています。不思議なことに、きっかけというきっかけもないまま、ある頃から急に、また頑張れるようになったんです。

私はこのとき、つくづく自分の無力を実感しました。いや、私の目から見たら家族のほうが圧倒的に無力に見えたのだけれども、そんなこの人を私がなんとかしなれば、と思っている間にも、当然ながら本人は誰よりも必死で苦しみの出口を探していて、どんなに周りがお膳立てしようと、自分で探し当てた出口から出る、それしか、本人が苦しみから抜け出す方法はないのだなあと思ったんです。

ただしそんな中で、強いていえば一つだけ、私達身内にできることがあるかもしれません。それは、苦しんでいる人を孤独にしない、ということです。
というのも、苦しんでいる人の側にい続けるというのは、それはそれで、とても苦しいことです。大きな喪失を経験し、心に空洞を抱えた人のすぐ側にい続けるということは、自分自身も大なり小なり、同じ苦しみを感じ続けるということです。最初のうちこそ色んな人が心配してやってきてくれるかもしれないけれど、次第に、半端な付き合いの人からどんどん遠巻きになっていきます。

苦しんでいる間、本人は、目の前にある今を生き続けるのに精一杯なので、それ以上先のことはあまり考えられない。時間が止まってしまいます。だけど、ようやくそこからほんの少し回復して、ほんの少し先のこと、周りのことが考えられるようになったとき、今度は、動けずにいた分の生活や、仕事のツケが、現実問題として一気に降り掛かってきます。そんな大変さが悲しみから気を紛らわせてくれ、ほどよく回復を後押ししてくれる場合もあれば、逆に現実の重さに、再起の目が摘まれてしまう場合もあります。そんなときにも、もし誰かが側にいたら、本人の心配や不安をその場で受け止め、少しでも軽減してあげられるかもしれません。

細かく見れば無数にあるであろう回復のプロセスの中で、苦しんでいる人のすぐ近くにいつも誰かがいてくれること、時間が止まっている間にも、自分の存在を忘れない誰かがいると本人が信じられることは、苦しんでいる人にとって、何よりの支えになると思うのです。

鶴子さんはご実家から電車で2時間弱の場所にお住まいということ。ご自身の生活もあるでしょうし、毎日ご両親に顔を見せるというようなことはさすがに難しいかも知れません。ならば、足を運べない日には、たとえば、きれいな花が咲いてたよ、とスマホから写真を撮って送るとか、いい本に出会ったらプレゼントしてあげるとか、なにか一つの大きなことではなくて、あなたのことをいつも気にかけていますよ、という小さなメッセージを、いろんな形で示し続ける。それを、ある程度傷が癒えるまでは、根気強く続ける、というのが良いのではないでしょうか。

またお兄さんご夫婦については、たしかにご両親ほどストレートな思いが伝わる距離感ではないかもしれません。ですからまずは、生活の手助けや子どもの面倒など、サポートが必要なときにはいつでも言ってねと、力になりたい気持ちを事前に伝えておく。その上で、お兄さんを通じて、定期的に一家の様子を気にかける、というのが良いのではないではないでしょうか。

繰り返しになりますが、傷ついた人、苦しみを抱えた人の側にいるというのは、自分自身にも少なからず負担のかかることです。ですので鶴子さんもどうか、くれぐれもご自分のお体を大事にされてください。できれば鶴子さんご自身も誰かの手を借りながら、ご家族のことを見守ってあげてください。

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イラスト:わかる

紫原明子● 1982年、福岡県生まれ。個人ブログが話題になり、数々のウェブ媒体などに寄稿。2人の子と暮らすシングルマザーでもある。Twitter

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