雑多な文化があって、それを何でも受け入れる土壌があるところが東京であり都会だと思っています。仕事で地方に行くことが多いのですが、帰ってくるとより強く感じますね。いろんな国、いろんなものがミックスされて、それをアレンジしたものが出てくる。〝こなし〟がうまいんですよね。
『サルーズキッチンマーケット』もそう。自然派ワインで中華なんて、すごく東京的で、外国からのお客様をお連れすると絶対大喜び。ワインを飲むと頭痛がする人がいますが私もそうで、でも自然派ワインだと痛くならないんですよ。だから春餅を自然派ワインで食べられるなんて東京だけでは?と喜びつつ、巻き巻きして食べています(笑)。
『アヒルストア』は最初に夫(編集者の岡本仁さん)が知人に聞いて通いだして、「多分、好きだと思うよ」って連れて行ってもらったのがきっかけです。今は人気店なので1時間並びます。よく言われるんです、「岡本さん(行列を)パスしてるんじゃないですか?」って。でもちゃんと並んでるのよ(笑)。そういう変な配慮がなくて、誰に対してもフェアっていうのが気持ちいいんですよ。このカッコつけてない雰囲気でサイウア(チェンマイソーセージ)と一緒に自然派ワインが飲める街なんて東京にしかないと思います。
夫とは、割としょっちゅう一緒に食べに行きます。お互いなんとなく溜まってる話をしたり。外食の趣味が似てるんですよ、お酒の好みも合うし。いい店を見つけたらこうやって教えてもらうことが多いですね。私は、常に新しい店に行ってみよう、などとアンテナを張ってるわけではないんです。
地方にも気の利いた店は増えていて、東京とまた違う良さがあるからそれはそれで堪能しています。一方で、たとえば『アヒルストア』にはだいたい土曜日か、出張から帰ってきた時に行くのですが、あそこで食事をすると、東京に帰ってきたなあという気分になるんですよね。東京には、そんな心の食堂的な存在があるのが、私にはうれしいです。