くらし

最高の仕返し。│束芋「絵に描いた牡丹餅に触りたい」

君は亜流だね。ある時、ニコニコしながら話しかけてきた大御所アーティストにそう言われた。ニコニコ顔で言われたので、褒めてくれてるのかと思い、こちらもニコニコしてみたが、「亜流」という言葉の意味がハッキリと分からないながらも、いいイメージは持っておらず、家に帰って辞書で調べてみた。


「亜流:独創がなく一流の人の模倣に終始する人。また、その作品」

やっぱり! あの人は私のこと貶(けな)してたんだ! もう目の前にいないその人に怒りをぶつけることはできず、逆に、あの時、意味が分からなくて良かった、とホッとした。そして、少し考えを巡らすと、ちょっと不思議に感じた。

私にとってそのアーティストは、一時代を作ってきた人、というイメージで、彼にとって山ほどいるであろう若い亜流アーティストになど、目もくれないくらい大きな存在の筈だった。そんな人が私にニコニコ嫌味を言いに、自分から近づいてきた。よっぽど目障りだったのか。

思い返してみれば、私は他にも「生意気だ」とか「何様だ」とか「あなたの作品は見る気もしない」などなど、立派な人たちから散々言われてきた。でも、どの言葉も、一度は傷つくものの、徐々に確実に制作の糧になっている。

もちろん褒められることは大好きだけれど、貶されるのも同じくらいの価値を持っていると思う。とにかく立派な人が、わざわざ、私に直接言いに来てくれるって、凄いことだ。

そして、私に嫌味を言う立派な人に対する仕返しを思いつく。妥協のない活動を続けていくこと。コレは、恩師に対しては恩返しにもなる、最高の仕返し。

束芋(たばいも)●現代美術家。4月末にギャラリーキドプレス等で個展を開催予定。

『クロワッサン』994号より

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