平井かずみさんのアトリエに学ぶ、美しい「引き算」の暮らし。
撮影・徳永 彩 文・黒澤 彩
片づけやすくストレスのない部屋を作る、小さなアイデア。
好きなものだけの コーナーを作る。
旅先で手に入れたオブジェやアンティークの花入れ、ガラス瓶、お茶を淹れるための道具など、自宅から持ってきた飾り棚に並べられているのは、平井さんの特別なお気に入りばかり。
「これも、私にとっては余白のスペース。全部収納するのではなくて、好きなものを見えるところに置きたいと思いました」
実用的なものしか置かないようにすると、たしかに部屋は片づいて見えるかもしれないが、心のゆとり、楽しみがなくなってしまう。飾るためのスペースだと意識すれば、その周りにごちゃごちゃと物を置かなくなるという効能も。棚を丸ごと使うのは無理でも、小さなコーナーを作ってみたい。
食器は数よりも種類を絞る。
仕事場ゆえ、人の出入りも多い。食器も1〜2人分というわけにはいかないはずだが、食器棚の中は意外なほど空いている。
「どうしても必要な分だけを自宅から持ってきました。プレートは大、中、小サイズを各5枚ほど。あとは大きな盛り皿が2枚。これだけあれば来客時にも対応できます。いろいろなタイプの食器を揃えなくても、和食にも洋食にも合うものが何組かあれば充分」
ついでの花掃除は 良い習慣。
花を飾ろうと思ったら、自然とその周囲を片づけたり、簡単に拭き掃除をしたりするはず。
「毎日水を替えるときにも、さっとひと拭き。せっかく布巾を手に持っているからと、気づいたらあちこち掃除していることも。これも、花を生ける効果の一つです」
季節の枝ものを 生けて楽しむ。
室内を清らかにしてくれる植物は、平井さんの空間に欠かせない。中でも枝ものは、ひと枝だけで形になるので飾りやすいそう。
「春ならコブシやモクレンをよく生けます。蕾のときから花が咲き終わって葉が芽吹くまで長い期間楽しめて、季節を感じられます」
カーテンはぴったりサイズに。
「間に合わせでサイズの合わないカーテンを付けたくなかったので、自分で作りました。結果、大成功。ぴったりサイズだと、とても気持ちがいいものです」
一番大きな窓用はドレープカーテンにするべく生地をたっぷり使い、玄関側の窓にはピンと張れるサイズ感に。手が届きにくい高窓のカーテンには共布で作った紐をつけて、ストレスなく開け閉めできるようにひと工夫した。
花は1種類を生ける。
「豪華すぎる花よりも、1種類だけを飾るくらいが、暮らしの風景には似合うと思いませんか?」
また、花が複数種あると枯れるタイミングがまちまちになり、生け替えがちょっとしたストレスに。同じ花なら一度にまとめて生け替えられて、始末がいい。
洗面室での手入れをシンプルに。
洗面・浴室にも物が少ないのは「ここで過ごす時間そのものがシンプルだから」と平井さん。入浴時にはキャンドルを焚いてゆっくり心身を癒やす。日々使うものだけを置くようにすれば、洗面まわりもここまですっきりさせられる。
「たしかに各アイテム少なめですけど、あまり意識していませんでした。片づけることが目的ではなくて、自分を大事にするために、どうしたいかなと考えています」
平井かずみ(ひらい・かずみ)●フラワースタイリスト。本誌目次ページで「花に託して。」を連載中。『caféイカニカ』と、こちらのアトリエが仕事の拠点に。
『クロワッサン』994号より
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