正座をしている際の 慣れとコツをご説明。│柳家三三「きょうも落語日和」
イラストレーション・勝田 文
「長い時間、正座していてしびれませんか?」。噺家になってから受けた質問で、回数の多さでベスト3に入るでしょうか。結論から申し上げると「しびれるんだけど、慣れである程度克服できます」ってところです。追記するなら「体重管理も大事ですよ」かな。
“慣れ”というのは、実際に正座する機会や時間が増えることで、それに応じた耐性ができるのがひとつ。もうひとつは、しびれにくくする“コツ”をつかむんですね、経験で。座る際に足の重ねかたやお尻の乗せかた、ちょっとした折りの膝の伸ばしかたなど……。ひとりひとりが独自の“コツ”を身につけているんです。ひとつだけ分かりやすいものをご紹介してしまうと、落語を演じている最中にあまり必然性を感じていない場面で膝立ちになることがあります。これはほぼ例外なく「しびれにくくするコツ実行中」です。
やはり血がかよわなくなることが一番怖い、ですから時々すっと腰を浮かせて膝を伸ばし、足の先のほうに血をかよわせているんです。さらに上級テクニックは膝立ちになった瞬間、かかとを浮かせてつま先立ちのように足の指を反らせて伸ばせば効果倍増です。
かくいう私は以前は高座でしびれる経験が皆無だったのですが、体重がほんの1、2キロ増えたこと、座る時の足の重ねかたが少し変わったことがダブルパンチとなり、恥ずかしながらしびれることが時々あります。一席演じ終わってさあ立ち上がろうとした時に「あれ? 足が思うように動かないぞ……」。この恐怖たるや、せっかくいい気分の「落語日和」も吹き飛んでしまいます。
柳家三三(やなぎや・さんざ)●落語家。公演情報等は下記にて。
http://www.yanagiya-sanza.com
『クロワッサン』993号より
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