料理研究家・内田真美さんの厳選美味。朝食、麺、鍋…全部食べたい、台北で「絶対美味しい」7軒。
撮影・青木和義 長野陽一(内田さん) コーディネート・蘇宥沂(Wendy Su)
料理家の内田真美さんが上梓した、『私的台湾食記帖』と『私的台北好味帖』は、いまや現地を旅行する(主に)女性たちの必読書だ。自身の仕事柄、食に関する記述が豊かで的確なのはもちろん、家族で旅する際の細やかな情報、街の隅々まで観察する視点が、旅情を誘うだけに終わらず、現地でもかなり実用的なのだ。
そんな内田さんに今回聞いたのが、クロワッサン読者に特にすすめたい店。
「台湾には美味しいものが溢れていますが、店の環境や形態は様々でそれぞれに良さがあります。私が本当に美味しいと思う料理、心地よく過ごせる店の雰囲気なども含めて、絶対に行ってほしい7軒と、そこで食べてほしいメニューを選んでみました」
【忠孝新生駅 】東雅小厨 (トンヤンシアオチュー)
確かな素材を使った料理は別格の美味しさ。
まずは、内田さんが「胃が少し疲れてくる旅の後半に予定しておく」というほど、その味と素材に信頼を置く店から。
店で使う素材はほとんどが政府の専門機関による検査をパスしたオーガニックなもの、「小農」と呼ばれる上質な野菜を作る小規模農家からの仕入れに限っている。
「店主はもともと料理本を作っていて、産地や素材の安全性を深く研究するようになったそうです。行きついた料理は、調味料にいたるまで素材それぞれが活き活きとしていて、どれも澄んだ味。美味しいと健康は同一、理屈抜きにそんなことを実感できます」
【忠孝敦化駅】圍爐(ウェイルー)
人気の「酸菜鍋(スヮンツァイ)」をエレガントな店内で。
中国北方の家庭料理、発酵させた白菜“酸菜”を肉や魚介などの具材と楽しむ鍋がこの店の名物だ。
「お楽しみはタレ作りから。15種類の調味料や薬味が入った壺がずらりと並んでいます。最初はあっさり酢や塩味で、徐々に芝麻醤や豆腐乳で濃厚な味にするのがおすすめ。香菜はたっぷり別盛りで」
ここの酸菜は細く切られており、他の具材とよく絡む。スープが減ったらすぐ足してもらえるのもうれしい。薄く切られた肉は牛や豚もあるが内田さんのおすすめは羊。
「白いクロスがかかったテーブル、制服を着た店員さんたちも雰囲気があって心地いいんです」
【大安駅】永和豆漿大王(ヨンホードウジアンダーワン)大安店
にぎやかに食べる朝ごはんは台湾の醍醐味。
台湾の楽しみといえば、ローカル気分での朝食。永和豆漿という屋号はあちこちで見るが、実は別経営。内田さんの行きつけは大安にある店舗だ。中でも必ず食べるのは「鹹豆漿(シェントウジャン)」。注文すると、器に刻んだザーサイや油條(ヨウティアオ)(中華揚げパン)、ショウガの甘酢漬けのような具がタレとともに投入され、ザーッと熱々の豆乳が注がれる。塩分や酸味と混ざった豆乳がふわりふわりと分離して、軽いおぼろ状になってきたら食べごろ。
「店頭で香りよく焼かれている焼餅類と一緒に。私の定番は卵入りの2種。もちもちとさくさくの皮を、どちらも楽しみます」
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