そして第3話の表題作『にごりえ』は、小料理屋で酌婦をしているお力(淡島千景)が主人公。酌婦はお運びからキャバ嬢的な接客、はては売春に近いきわどいこともやる稼業で、お力は足を洗いたがっています。お力に一方的に入れあげる源七(宮口精二)とその女房(杉村春子ぉー!)との腐れ縁に辟易しつつ、よさそうな男(山村聰)との出会いもあるにはあるのですが……。
淡島千景は宝塚の娘役出身で、戦後の自由な女性像を体現してデビューした人。大きな目鼻立ちとカラリと気っ風のいい口調の、まさに女が憧れるカッコいい女。それだけに、言っちゃあなんだけど、源七なんぞに絡め取られていくラストが悲しくて悲しくてやりきれない。合意の情死かストーカー的な被害か。女性の性被害における問題を考えさせる、とてもいまっぽい物語なのでした。