くらし

いつか使う、で始まる 見えない浪費癖。│束芋「絵に描いた牡丹餅に触りたい」

私の家には既に何万もの「モノ」が存在する。作ることに携わっているので、放っておけば、増える一方。断捨離やミニマリストの話を聞くたびに、自分が何か悪いことをしている気持ちになることもある。

30代前半までは、大きなプロジェクトが終わるごとに引っ越しをしていた。都度、荷物を全部ひっくり返して残しておくべきか否かを一つずつ判断していたのだけど、この田舎の地に移り住んで10年、全く動かないものが沢山あった。「気合いを入れてやってみるか!」と荷物をひっくり返してみた。そこから3カ月、朝から晩まで片付けだけに時間を使ってみたけれど、結局終わらず、、、。3カ月ずっとやっても、タッチすることすらできなかったモノがまだあるのだ。一つ一つは私が今まで選んで買って、使ったモノ。そして、その後、モノを家に留めておくため、車の維持費のようにそれらを維持するための費用を10年間払い続けてきているということ。3カ月の片付けで荷物はになった。そのの荷物が6畳の部屋1部屋分(床から天井までぎっしり)ほどになる。即ち、6畳の部屋2部屋分のゴミを10年間維持して来たのだ。少な目に計算してもゴミに数百万円ものお金を使って来たということになる。

正直、自分は節約家だと思って来た。断捨離やミニマリストが賞賛される今の時代でなければ、自分のこの浪費に気づくこともなかったと思う。まだ胸を張れる状況にはなってないけれど、この気づきがきっと真っ当な生活に導いてくれると信じている。

束芋(たばいも)●現代美術家。近況等は https://www.facebook.com/imostudio.imo/

『クロワッサン』991号より

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