くらし

男が大きく見える場所。│束芋「絵に描いた牡丹餅に触りたい」

私は山の中に住んでいる。10年前に実家の屋根裏部屋に短期のつもりで移り住み、結婚しても夫に移り住んでもらって、今に至る。標高1000m以上の山の中は、狸、狐、鹿はもちろん、猪や猿の集団、ニホンカモシカや熊の親子も現れるような場所。ここでの生活を10年経験して初めて、この地球に男性が存在してくれたことに心から感謝することができた。

私は幼い頃から同性と遊ぶのと同じように男の子と一緒にいたし、大人になってからも、男女を性別で分けることをせず、個人として関わってきたつもりだ。男性蔑視などしてきていないと信じているのだが、最近まで、特に同世代の男性を尊敬の目で見たことがないことに気づいた。そしてそれが都会で暮らしてきたことが原因だと、山での生活がスタートして数年で気づくことになる。

冬が厳しい山で、快適な生活を手に入れるために、都会では考えなかった様々な作業が必要となる。その作業に男性が生まれ持った筋肉が大きな役割を果たす。単純に、力が強い男性は雪掻きや薪割り、猿を追い払うのに、女よりも向いているということ。猿は賢いので、私が出て行ってもノミ取りを止めず、鼻くそをほじりながら一瞥する程度。特に野生の猿は、人間の男と女は見分けているようで、男が出て行くだけで効果あり。雪掻きや薪割りの機械の使い方も男性の方が断然センスがあり、薪割り機で割る前の直径30㎝を超える丸太は男の筋肉無くしては持ち運べない。圧倒的に違うのだ。それは70を超えた父も、女子力高い系の夫も。

医学部入試での下駄履かせで、女子の優秀さというのは世間に轟くことになってしまったけれど、生活拠点の選択肢が広がれば、男子が下駄を履かずとも、大きい存在として尊敬される場所は、この地球上に実はまだまだ沢山ある。

束芋(たばいも)●現代美術家。近況等は https://www.facebook.com/imostudio.imo/

『クロワッサン』990号より

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