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【紫原明子のお悩み相談】スピリチュアルにはまっていく友達に困惑しています。

『家族無計画』や『りこんのこども』などの著書があるエッセイストの紫原明子さんが読者のお悩みに答える連載。今回は、スピリチュアルへの傾倒が激しくなってきた友人との付き合い方についての相談です。

<お悩み>
スピリチュアルにハマっている友人に困惑しています。
悩み事や近況報告などをすると「◎◎したほうがいい時期なのかもしれないよね、今水星逆行だし…」とか、「そんなふうに思うのは今日が満月だからだよ」など、星や天体を絡めて話してくるので、毎回「その科学的根拠は!?」という言葉を飲み込む日々。彼女が人生の重大な決意をするときも、「やっぱり導かれているんだ!だって私、前世は◎◎だから…」などと言っていると心配になります。
最近ではfacebookにも同様の書き込みをするようになり、いいね! すると自分も信じているみたいに思われそうなのでそっ閉じ。うまく、私はあんまりそういうの、信じてないから……と角を立てずに伝える方法はないでしょうか?(相談者: クッキー/20代女性、フリーライター)

紫原明子さんの回答

クッキーさん、こんにちは。
以前、編集者の友人が戸惑いを隠せないといった顔で、こんなことを言ってました。
「最近、知り合いの女性ライターが次々と占い師に転向してるんだよね……」
これを聞いて私、まあそういうこともあるだろうと思わざるを得ませんでした。

クッキーさんのご職業はフリーライターということですが、お仕事でコラムやエッセイを書かれることはありますか? もしそういったこともやられるのであればきっと分かっていただけるのではないかと思うんですが、学者や研究者でない物書きがそれなりに説得力あるコラムを書こうとするとき、一番むずかしいのってその根拠をどこに置くか、ということなんですよね。

なるほど、そういう根拠があるのならこの人の言うことはもっともだよな、と思わせるための材料は往々にして自分や他人の体験になるんですが、大なり小なり、気付きを導き出せるほどの強い体験というのは、実際はそうそうあるわけではありません。そこで、困ったときには、既に世に送り出された本や映画などの名作を引っ張ってきたりもします。要するに、理屈がきっぱり通っていること、もしくは、私以外にもこういうこと考えてる人がいますよ、ということを示すと、読む人が安心して読める、ということなんです。

で、日々そういうことをやっていると、たとえば星座とか、手相とか、画数とか、そういうものが、ヒジョーーーーに魅力的に見えてくるんです。なにしろ、根拠となるものを探さなくていいので。

「星がこういっているので、こうです」
「手のシワがこうなっているので、こうです」
「画数が○画だから、こうです」

こんなに話が早いことってあります? すごく疲れているときなど、私もふと占いを学ぼうかなと思ってしまいます……いや、もちろん占い師の方々にだってさまざまなご苦労があるのだとも思いますが。

書き手にとって省エネならば、読み手にだって当然そうです。「これはフェイクニュースかな?」などと疑う必要もなく、占いだから鵜呑みにできることになっている。

で、そんな他人任せな姿勢を、良い悪いかは別として、大人としてあるまじきこと、と責められるかというと、なかなか難しいところがあります。

というのも、私たちの日常には実際に、あまりにも惑いが多いじゃないですか。
本当はそんなことないのに、選択肢は万人に平等に、無数に用意されているかのように見せかけられているし、選び取ったものに付随する結果はすべて自己責任とされてしまう。こんなリスクと天秤にかけつつ、自分で決めていく重圧に耐えられない、あるいは、決めようにも決定的な動機がないと悩んでいる人、実はごまんといます。でもその全員がスピリチュアルに走るわけではありません。じゃあその人達はどうしているかというと、やっぱり、それぞれの信仰を見つけるんです。スピリチュアルに限らずとも、ある人は仕事、ある人は結婚や家族、ある人はアイドルやアニメ、ある人は美容やボディメイクといった具合に。あ、最近だと、インフルエンサーのサロンに入る、というのもその一つですね。

クッキーさんは現在20代ということですが、クッキーさんの周りではおそらく今後、この傾向はどんどん強まっていくのではないでしょうか。というのも、年齢を重ねてキャリアを積み、収入が上がれば、その分自ずと選択肢も増えます。一方で女性にとっては、出産のタイムリミットが否が応でも視界に入ってくるようにもなり、わけもない焦りや友人の状況といった耳障りな雑音も、どんどん大きくなってしまいます。ともすればたちまちこの大海原を漂流してしまいそうになる自分自身を、一箇所につなぎとめておいてくれるものが、これまで以上に切実に必要になってくるのです。

悩むのが人間、決断にゼロリスクなんてなくて当然。と腹をくくれる勇敢な人も一部にはいるのでしょうが、多くの人は自覚的にも、無自覚にも、自分の下すべき決断を、何のエビデンスもないけど後押ししてくれる外部の力に、大なり小なり依存しています。それについてはもう、そういうものなのです。

ただ、スピリチュアルとなると気をつけなければならないのは、内容次第で本人のお金や労働力を搾取されたり、周りの友人や家族との軋轢を生みかねないというところです。が、今回書かれているような内容の星占い程度であれば、信じるも信じないもお互い勝手にしましょう、ということでいいのではないでしょうか。たとえばこちらが聞いてもいないのに引くほど推しのアイドルの話をしてきたり、Twitterのプロフィールにいつの間にか所属サロン名を掲げて1日のツイート数を増やし始めた友人と同じように、どうか温かく見守ってあげてください。もし、星占いの話をクッキーさんがどうしても不快に感じるのであれば、こういうのは人それぞれで当然だよね、という空気を全面に出しつつ「私は信じてないんだ〜」と、ストレートに言ったっていいと思います。ただ、いずれにしてもぜひその後も、星占いを信じていないクッキーさんとして、彼女とお付き合いを続けてあげてください。

たとえばもし彼女が「私の前世はこうだからこう決めたんだ」と言ってきたとして、クッキーさんは、彼女の前世が何だったかという部分は一切無視して、その決断の良し悪しにだけ目を向けてあげてください。その決断が彼女にとってベストかどうか、ぜひ考えてあげてください。もし必ずしも良いと思えないのであれば、なぜそう思えないか、星の配置には一切触れず、クッキーさんの思うロジックで、言葉を尽くして説明してあげてください。

というのも、大事なことの一つや二つを星占いで決めてしまうことより本当に心配なのは、星占い以外に、彼女の心に届く言葉が一切なくなってしまうことだからです。彼女にとっての星占いが、数あるアドバイスの中の一つであり続けるように、星占いを信じないクッキーさんとして、彼女に語りかけることを、どうかやめないであげてください。

……ちなみに、もしそこまでの付き合いでもないということであれば、もうちょっとクールに距離を置いてもいいのかもしれませんが、一つだけ。お友達が謎めいた力を持つ水を大枚はたいて買いそうになっているときには、頑として止めてあげてください。星まではいい、水はアカン、と。何卒、よろしくお願いいたします。

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イラスト:わかる
イラスト:わかる

紫原明子● 1982年、福岡県生まれ。個人ブログが話題になり、数々のウェブ媒体などに寄稿。2人の子と暮らすシングルマザーでもある。Twitter

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