くらし

【紫原明子のお悩み相談】小学校受験に挑む娘が不安です。

『家族無計画』や『りこんのこども』などの著書があるエッセイストの紫原明子さんが読者のお悩みに答える連載。あなたもお悩みを投稿してみませんか?

<お悩み>
はじめまして。このような機会をいただけてとても嬉しいです。

私は30代前半の5歳の女の子がいるワーキングマザーです。 この4月から娘が塾に通って小学校受験をしたいと言い始めました。 ただ、なぜかは言ってくれず、ただただ通いたいと……。
しかし、もう入試まで時間もなくこれから教えるとなると厳しくもなります。 塾のクラスは年少や年中クラスからの経験者がほとんど。 もちろん一番の劣等生ですし、いろいろ言われてはぼーっとしている娘が散見されます。 泣いたり、過剰に甘えることも増えてきました。 加えて娘は喘息持ちで入院をしてから少し情緒が不安定、勉強する土台にも不安があります。
でも娘は一向にやめようとはしません。 もちろん家族総出でバックアップはします。 しかし、私は心配で将来もっと情緒が不安定になりはしないかと見ているのが辛いです。 無理にでもやめさせるべきか、意思を尊重すべきかアドバイスをお願いいたします。
(相談者:ソムタム /自営業でコンサルの仕事をしている30代のワーキングマザー。5歳の女の子がいます。)

紫原明子さんの回答

ソムタムさんこんにちは。お子さんのこと、心配ですね。がんばりやさんな性格なんでしょうかね?

思い起こせば私の友人の娘にも、ものすごく頑張りやさんの子がいました。幼稚園の頃、その子は誰に強制されたわけでもないのに、自ら進んで逆上がりの練習に取り組みました。最初は当然ながらうまくいかず、できない、できないと言いながら号泣。側で見ているお母さんは大笑いしながら「別にいいじゃん、逆上がりなんてできなくたって。なんでそうまでしてやろうとするのよ。悲しいならやめていいんだよ?」と声を掛けるんですが、娘の方は号泣しながらそれでも尚ストイックに鉄棒にぶら下がり続け、ほどなくして立派に逆上がりを習得していました。

その子は幼稚園の途中でスイミングも習い始めたのですが、嫌ならいつでも辞めていいよ、というスタンスのお母さんに対し、やっぱり頑なにどこまでも上を目指し続け、やっぱり定期的に号泣しながら、誰に強いられたわけでもない努力を自分に課していました。今、この親子は海外に移住してしまったんですが、お母さんのインスタグラムには、今や高校生になった彼女がブロンドヘアの友人と、スポーツジムでトレーニングしている写真などが時折アップされます。数年前に久々に会ったときには、「大学はハーバードもいいな」って言ってました。ハーバード。彼女のことだからきっと行くんだろうと思います。

子どもって、親が教えた覚えのない個性をどこからともなく発揮してくるので、戸惑いますよね。ソムタムさんが仰るように、どれくらい本当にやりたいことなのかという熱量も、目に見えませんからね。というか、そもそも子供に限らず、大人だってそうですね。果たして口で言うことにどれほどの本心が含まれているというのか。口で表明した意志にどれだけの強度があるというのか。おしなべて怪しいもんです。ほかでもない私はここ1年で10キロほど太りまして、よーし痩せるぞ〜! と毎日のように言い続けてますが、言霊が功を奏して体重は順調に増え続けてます。

だから(なんのだからだって感じですが)、やっぱり言葉は言葉で半分くらいを真に受けつつ、同時進行でなるべくフラットな目線で娘さんを観察する、状況証拠を照合しつつ、彼女が言語化できない思いを汲み取る、ってことができればいいですよね……って簡単に言うけど、それが最も難しいってこともよく分かります。

私も、自分の息子が5歳だったとき、彼が毎日どんなことを考えているのか、まったく分かりませんでした。彼が16歳になった今でも、やっぱり何を考えているのか全然分かりません。ところが、よその小さい子が何を考えているのか。自分の息子のときには分からなかったことが、今ならたまに、手に取るように分かることがあるんです。おばさんとか、おばあちゃんとか、たまにやたらと子どもをあやすのが上手い人がいるじゃないですか。それってやっぱり、育児に費やした年月分の知見が溜まっているからだと思います。育児はすべて個別ケースとはいえ、自分の子より小さい子を見たとき、その子の、その先の未来に起こり得ることを、パターン別程度には予見できたりするようになると思うんです。人が成長する過程を見ているので、過去を振り返って、この子が今どの段階にいるかということが、ともすれば親御さんより相対的に見える場合もあるのではないでしょうか。

ですから、ソムタムさんはぜひ、毎日お子さんと会われている幼稚園の先生とか、あるいは上にお兄ちゃんやお姉ちゃんがいる先輩お母さんなど、身近で知見が豊富な人に、今現在お子さんの様子がどう見えているか、尋ねてみてはいかがでしょうか。頑張り過ぎて危なっかしい子に見えてるのか、それとも頑張るのがどうも根っから好きなタフな子に見えるのか。印象を聞き込みするんです。

相談していただいたのに次の相談先を提案するというのはなんというか悪どい金貸しみたいで申し訳ない気持ちになりますが、自分に経験があることに傘に着て、断片的な情報で会ったこともない子の状態を判断するというの無責任だし身勝手だし危険なことだと思うので何卒ご理解ください。

もちろん、周りの人の印象を集めたとしても、あくまでも他人の意見であることには変わりないので、そこで得られた情報をすべて鵜呑みにする必要はなく、まずは参考にする程度の気持ちで良いのではないでしょうか。我が子の日常を知っている親と、親しい他人、大人複数人の見立てをそれぞれを目の前に並べてみると、もしかしたら、それまで見えなかった、お子さんの新しい一面がぼんやりと浮かび上がってくることもあるかもしれません。よければ続報をお待ちしてます。

イラスト:クロワッサン編集部・どーなつ

紫原明子● 1982年、福岡県生まれ。個人ブログが話題になり、数々のウェブ媒体などに寄稿。2人の子と暮らすシングルマザーでもある。Twitter

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