くらし

アイコンタクトと笑顔。│束芋「絵に描いた牡丹餅に触りたい」

去年の春頃、ベルリンに3カ月滞在した。今年はパリに3カ月滞在した。

海外で3カ月滞在すると、その国の特徴などが見えてくる。去年のベルリン滞在でもドイツ人のことを随分わかった気になって帰ってきたし、今年のパリでは、嫌いだったフランスが好きになるほど、以前とは違った理解に至った。

ところが、ベルリンもパリもある程度理解し、好きになったところで、3カ月パリ滞在後の1年ぶりのベルリン10日旅。「うんうん、知ってる知ってる」という感覚で旅行をするのだろうと思っていたけれど、実際は違った。

ドイツ人の愛想のなさが悪目立ちする。

いやいや、去年も同じだったはずだけれど、この違和感は何なのか。それは、パリでの3カ月間で、すっかり愛想のいい人たちに慣れてしまったせいだった。10年以上前、展覧会でパリに訪れたときは、愛想のない人々に嫌な思いをした覚えがある。けれど、今年のパリでは、店に入ったときも、アパートのエレベーターで一緒になったときの挨拶も、肩がぶつかって謝るときでも、アイコンタクトをし笑顔になる。そんな場所に3カ月いると、他人と目を合わすと自然に笑顔が出てくるようになるが、ベルリンでも日本に帰ってきても、見知らぬ人と話をすることになったとき、笑顔を向けてくれる人はほとんどいない。

自分の笑顔の空振りに、恥ずかしくもなり、だんだん、自分もアイコンタクトもせず、笑顔も作れなくなってしまう。公共の場でのアイコンタクトと笑顔は、フランス人が確実にドイツ人や日本人より優れているところで、この国民性が、遅刻されても、約束をすっぽかされてもなお、最終的には許してしまえる部分なのだと思う。と同時に、時間も約束も守れるドイツ人や日本人に、アイコンタクトと笑顔の武器があれば無敵なのに……と残念に思うところ。ま、この状況でドイツ人もフランス人も同じくらい好きだと言えるということは、良い部分と悪い部分がそれなりにバランスが取れていて、どの国の人も「人間らしい」ということなのかもしれない。

束芋(たばいも)●現代美術家。近況等は https://www.facebook.com/imostudio.imo/

『クロワッサン』988号より

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