いつまで飛び続ける!?『DaiPyooon』│山口恵以子「アプリ蟻地獄」
イラストレーション・勝田 文
可愛い大根キャラクターが、空から振ってくる岩や火の玉を避けながら、こっちの崖からあっちの崖にピョンピョン飛び移るゲーム。
この大根キャラ、仮に“大ぴょん”と名付けよう。岩と岩の間隙を縫い、降りかかる火の粉をかわし、「ポイン(?)」という掛け声を発しながら右から左、左から右へと飛び移るその姿は、何とも健気である。
ゲームをしながら、ふと大ぴょんが我が身に重なって見えた。
実は我家もご難続きで、去年は同居する長兄が二回の脳梗塞と左膝骨折に見舞われ、今年は年明け早々から母が体調を崩し、何とか回復したものの再び悪化、九月には大下血で救急搬送され、一時は命が危ぶまれた。更に、そのわずか一ヶ月後、兄が三度目の脳梗塞に……!
昨年来、私は何度救急車に同乗したことか。山中鹿之介じゃあるまいし、艱難辛苦は欲しくないです!
その中で、仕事に穴を開けないように必死の綱渡りを続けたこの一年半は、落下物をかいくぐって飛び回る大ぴょんみたいなものだ。死ぬまで飛び続けなくてはならないのも、大ぴょんと同じ。私がコケたら、母も兄も猫三匹もみなコケる。
さて、ゲーム結果。跳躍回数は最高数六十回で、還暦の壁を破れず。五十九回までは何度も行ったが、その先が難しい。
ここで終わってたまるか。人生はまだまだ続くのだ。私は死ぬまで病気しないで元気でいるぞ。
大ぴょん、きみも頑張れ。お互い、百を目指そうね。
山口恵以子(やまぐち・えいこ)●作家。最新刊『ふたりの花見弁当 食堂のおばちゃん4』(ハルキ文庫)。
『クロワッサン』986号より