動物版組体操にハマる!?『どうぶつタワー』│山口恵以子「アプリ蟻地獄」
イラストレーション・勝田 文
読んで字の如く、画面に現れる動物を台に落下させ、ピラミッド状に積み上げてタワーを作るゲーム。動物版の組体操と言っても良い。
「フン。いい大人がそんなもん」
読者のみなさんの声が聞こえてきそうだが、ちょっと待って下さい。
やれば分る。ハマるんです、これ。
象、パンダ、白熊、ラクダといった大型から、ペンギンや亀、ヒヨコなどの小型まで、色々な動物がアトランダムに登場する。これを台に落とすのだが、着地点の目測を誤るとバランスを崩して台から落ちてしまうし、ピラミッドの角度が悪いと、落ちてきた動物はバウンドして台を飛び越えてしまう。その時点でゲームオーバー。
単純なようで、実は複雑だ。象がペンギンの上に着地することもあれば、ヒヨコがキリンの首でバウンドしてしまうこともある。
動物たちの動きは予測不可能で、大丈夫だと思ったのに足下をすくわれる展開が何度も起きる。
私は最高が十六頭だが、編集担当M氏は二十三頭のタワー作製に成功した。
悔しい! 負けるもんか!
動物を落下させることウン百回。気が付けばとっぷり日暮れていた。
あらら、冗談じゃない。締め切り迫ってるのに、どうしよう!?
何となく博打にハマる人の気持ちが分った。丁か半か、そんな単純なゲームに熱中して有り金巻き上げられてしまうなんて、アホかと思っていたが、逆だった。単純だからハマるのだ。
恐るべし、どうぶつタワー。
山口恵以子(やまぐち・えいこ)●作家。最新刊『ふたりの花見弁当 食堂のおばちゃん4』(ハルキ文庫)。
『クロワッサン』984号より