人はみんな事情をかかえ 喪黒福造を待っている。六本木ヒルズ展望台 東京シティビュー『藤子不二雄展ーの変コレクションー』│金井真紀「きょろきょろMUSEUM」 | アートとカルチャー | クロワッサン オンライン
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人はみんな事情をかかえ 喪黒福造を待っている。六本木ヒルズ展望台 東京シティビュー『藤子不二雄展ーの変コレクションー』│金井真紀「きょろきょろMUSEUM」

新聞やネットに載っている人生相談が好きだ。長年にわたって人生相談を熟読してきたおかげで、世事のあれこれを知ったかぶって語れるほどである。「恋人の『忙しい』を信じちゃダメ」「ママ友は友だちではない」「実の母親より姑と気が合うことは多々ある」とかなんとか。自分は姑を持ったこともママになったこともないのだから、こうなるともう年増の耳年増である。

匿名の人生相談を見るたびに「人はそれぞれ事情をかかえ、平然と生きている蘓伊集院静」だなぁと思う。そう思うことで、たぶんわたし自身が救われているのだろう。同じ味わいを漫画『笑ゥせぇるすまん』にも感じる。喪黒福造は「ホーホッホッホ」と笑いながら、人の悩みに近づいて、「平然と生きている」つもりの仮面を剥がすのだ。なんとも恐ろしくて、気持ちいい。

藤子不二雄Ⓐは言う。かつての相棒の藤子・F・不二雄氏は純粋な人で、30歳になっても40歳になっても『ドラえもん』を描き続けることができた。でも自分はある程度描くと飽きてしまい、また別の作品が描きたくなるのだ、と。『怪物くん』『忍者ハットリくん』『プロゴルファー猿』『魔太郎がくる!!』……会場を埋め尽くす多彩な作品群が「飽きた回数だけ新しく生まれた世界」だと思うと感慨深い。一途に進む才能と飽きる才能と、両方あるんだなぁ。

展覧会を見終わって六本木ヒルズ52階から降りると、大都会の路上には平然とした顔つきで行き交う人々。きっとどこかに喪黒さんも……。

『藤子不二雄Ⓐ展ーⒶの変コレクションー』 
六本木ヒルズ展望台 東京シティビュー(東京都港区六本木6-10-1)にて2019年1月6日まで開催。「黒藤子」の異名を持つ氏の世界を原画や未公開作品などで辿る。電話番号03-6406-6652 10〜22時 無休 大人1,800円

金井真紀(かない・まき)●作家、イラストレーター。最新刊『サッカーことばランド』(ころから)が発売中。

『クロワッサン』987号より

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