震災を経験してわかった、家具・日用品リスクの軽減法。
撮影・青木和義 文・丸山亜紀 構成・大川朋子
片づけアドバイザーの石阪京子さんは関西在住。阪神・淡路大震災、そして今年6月の大阪府北部地震と2度の大きな揺れを体験した。阪神・淡路の際は新婚で引っ越し直後、夫は出張で留守だった。「テレビを呆然と見つめ、非常事態を理解しつつも、なすすべもなく出社の準備をしていた」という。
非常時にどう行動すべきか瞬時に判断するのは難しい。だからこそ、日頃の備えと、情報収集こそが重要になる。防災用品は何を備えるか。震災を経験した人の中には、防災を意識するあまり、普段の暮らしが不便になっている人も少なくないそう。部屋を覆い尽くす大量の防災グッズ、期限切れの水やカイロ、水不足のトラウマから湯船に水を常に貯め、風呂場がカビだらけな家も。だが、それでは本末転倒。
「普段の暮らしを大切にしながら、災害に備えることが大事です」
災害は地震とは限らず、無事避難できるかも分からない。だからこそ家の中が安全であることが第一。家具が倒れないようにするのはもちろん、モノを減らし、7割収納を実践する。モノは流動的で常に増減するため、3割の余剰空間がないと溢れ出し、そこから散らかりが始まる。床に置かれた荷物や、戸棚いっぱいに積まれたアイテムは、避難の妨げになるだけでなく、地震の揺れで飛び散る可能性もある。特にリビングは家族が集まり、避難の準備をする場所でもあるため、日頃からすっきりきれいな状態に。7割収納は、モノを一度棚からすべて出し、必要なアイテムを厳選して実現。さらに用途別にボックスなどに分類することで、地震で扉が開き、中から荷物が飛び出す被害を軽減する効果もある。
また、必要なものがすぐに取り出せ、家族もどこに何があるかを把握している状態を日頃から作っておく。例えば、避難所から夫が一人で家に荷物を取りに戻った時、「あれはどこ?」といちいち聞かずに済むように対処。特に当座の生活費を引き出すためのキャッシュカードや、被害にあった場合に保険請求がすぐにできるよう保険証書の持ち出しは、誰でもできるようにしておく。
瞬時に必要書類を取り出すためには、あらゆる書類をホームファイリングで一括管理する。持ち出し用のマネーボックスのほか、暮らし、健康、教育、取扱説明書/保証書、未処理の6つのカテゴリーを、ファイルボックスで大まかに分け、その中でフォルダーに細分化。フォルダーは用途に合わせて、分類項目を追加してもよい。
「経験上、書類のほとんどはなくても困りません。すべてに目を通し、保険、年末控除、住宅の書類は保管します」
水害の危険地域はハザードマップを確認し、自宅が該当するようであれば、水災保険に必ず入る。避難の際は、マネーボックスごとスーツケースに入れて持ち出す。また、常備薬は、回数や注意事項を記した紙を、救急の人でもわかるように一緒に収納しておく。
「防災用品は普段使っているものを活用します。用途が多岐にわたるものを選べば最小限の量で済むはずです」
水やインスタント食品は、期限切れがないよう普段使用しているものをローリングストックし、在庫を切らさないようにする。その他の備品は即取り出せる場所に一括収納。防災リュックは重くて扱いにくいので、避難場所が決まったら、スーツケースで持ち出す。
西日本では今夏大型家具を処分した家が多く、石阪さんは震災による意識の変化を感じるという。災害が多い今、日頃の備えは皆の重要課題と心得よう。