音だけで見えないものを 想像させ、伝える醍醐味。│しまおまほ「マイリトルラジオ」 | アートとカルチャー | クロワッサン オンライン
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音だけで見えないものを 想像させ、伝える醍醐味。│しまおまほ「マイリトルラジオ」

家で3歳の息子が突然叫んだ。

「テビレでみせて!」

テビレとは、テレビのこと。つけっ放しのラジオからウルトラ怪獣の話題が出たので、テレビで観たいというのだ。どうやらテレビをつければラジオの映像が映ると思っているらしい。

「これはね、音だけなんだよ。テレビをつけてもウルトラ怪獣の番組はやっていないのよ」

と言ってもきかない。仕方なくテレビをつけて、説明した。

「ホラ、やってないでしょ。ラジオとテレビは別なんだよ」

納得のいかない息子はニュース画像とにらめっこし、プイッと遊びに戻った。息子の勘違いから、テレビの音声をラジカセで聴くことができた頃のことを思い出した。

我が家のテレビのチャンネル権は祖父にあり、NHKしか観ない祖父の前でバラエティ番組などつけることはできなかった。

そんな時は、自室でラジカセでテレビの音声を聴くのだ。

しかし、これが面白くないのだ。あんなに大笑いして観ていたテレビが、音だけでは何をしているかちっともわからない。

そんな経験があるせいか、見えないものを想像させ、今何が起こっているかを伝えるラジオパーソナリティーの話術にはいつも感動する。

「言うならば、炊飯器くらいの大きさの空母、といった感じでしょうか」

なにそれ?どんな物なの?例え上手なパーソナリティーはラジオ好きの心をくすぐる。

息子よ、これがラジオの醍醐味。テビレでは決して味わえない、面白さなのだよ。

しまお・まほ●エッセイスト、漫画家。1997年『女子高生ゴリコ』でデビュー。著書に『マイ・リトル・世田谷』。

『クロワッサン』983号より

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