「執筆当時、不倫報道が凄くて。不倫いいねとはならないけど、配偶者としかセックスしないのが“正しい”姿だとしたら、と書いてみたら、凄くいびつで。この女性はかっこいい反面少し怖いですよね。不倫不倫って皆、口々に文句言うけど、正しいセックスってこうなりますがいいですか?って」
今や一億総裁判官、失言、不倫、失態に各々がジャッジを下す時代。
「すごく“正しい”ばやりですよね。でも正しさを追求すると許容力の低い世界になってしまう……」
千早さんが淡々と流麗な文体で描く正しさは問題提起の種であり、読み手は心に刺さったり、ざわついたりしながら、改めてさまざまな正義について考えさせられる。
「正しさって結局あとからわかる。最後に書いた“老い”(タイトル「描かれた若さ」)みたいな、年をとってからやっとわかってくるものだと。人に『これが今の正しいもの』と提示されても必ず反発するはずで、自分で見つけなければいけないものだなって思うんです」