くらし

コトリンゴさんに聞く、心地よい眠りへいざなう音楽。

音楽や本はリラックスして過ごす時間のいいパートナー。入眠前のひとときにも、夜更かしする晩にもおすすめの作品を紹介します。
  • 撮影・青木和義 文・黒澤 彩 ヘア&メイク・中井正人

[音楽]温かみのある声や楽器の音が、日常の喧騒を忘れさせてくれる。

コトリンゴさん 音楽家

ロングヒットしたアニメーション映画『この世界の片隅に』の主題歌など全音楽を担当し、いくつもの賞を受賞した音楽家のコトリンゴさん。透明感のある歌声とピアノで、本人の印象そのままのふわりと柔らかな音楽を紡いでいる。そんなコトリンゴさんが眠る前に聴いている音楽とは?

「家にいるときは、一日中なにかしらの音楽をかけているのですが、夜は、いい意味で“気にならない”音楽を選びます。聞き流せるものがちょうどいいかなと」

気になる曲=メロディがしっかりとあるタイプの曲だと、どうしても耳が追ってしまう。すると、思わず口ずさんでみたり、少しテンションがあがってしまったり。音楽家ゆえ、普通の人よりも余計に敏感に反応するのかもしれないが、興奮してやる気が出てきてしまったら、眠るためには本末転倒。時間帯や気分によって、聴くものを変えているそう。たとえば、朝は気持ちが晴ればれと明るくなる曲や、メロディーを口ずさみたくなる曲を。ちょっと落ち込んでいるときには、ジャズや踊りたくなるようなラテンの音楽を選ぶ。

また、昼夜問わず、心を落ちつけたいときには古い録音のCDを手に取ることが多いという。今回挙げたなかでは、次ページで紹介するアフロディテス・チャイルド(4)やグレン・グールド(10)などが当てはまる。ヴァシュティ・バニアンのアルバム(2)は、デモ(試作段階の曲)まで録音されているところがゆるくて気に入っているのだとか。

「数十年前と現在では、録音方法が全く違うので、やっぱり聞こえる音も違ってきます。今はコンピューターを使って録音するから音はクリアだし、テンポも一定に保てるのですが、昔のものはマイクが拾った音をそのまま収録しているので、息づかいやライブ感まで伝わってきます。ノイズが入っていたりもするんですけど、それもまた温かみがあっていいなと思います。同じように、生楽器の演奏もとても好き」

テレビから聞こえる音や、街で流れている音楽はテンポが速く、耳にするだけで疲れてしまう。「家で、とくに夜には、そんな喧騒を遮断してくれるような音楽を聴きたい」とコトリンゴさん。古い録音のものばかり聴いていた時期もあるという。

「2011年の震災の後、怖くて不安な気持ちで、しばらくは自分の曲も含め、新しい曲をまったく聴くことができませんでした。音がクリアすぎる気がして耳が受け付けなかったんです。でも、かつてのアナログな音はむしろ不安を和らげてくれて、その温かみをあらためて感じました」

夢の中でも曲が頭から離れない。時にはうなされることも!?

眠る前の習慣をたずねると、すぐに「お風呂!」との答えが。

「一日の最後がお風呂と決まっていて、入浴後は、もう何もできません」

湯船にゆっくり浸かりながら、作っている曲のことを考え、ひとり言をポツポツとつぶやいたりもする。

「実家で飼っているインコが、夜、ひとり言みたいに言葉の練習をしているのを見て、『あ、私と同じだ』って思いました。歌ったりつぶやいたりしているうちに、ふっと問題が解決することがあるんです」

煮詰まった頭と心をお風呂でほぐせば、ふだんはすぐに眠れる。どうしても寝付けない夜には、ラベンダーのアロマやカモミールのお茶、頭を冷やすシートなどあれこれ試し、それでもダメなら、いっそ潔く起きていることにする。

「曲作りをしているあいだは、熟睡できていないのか、夢の中でも曲が聞こえています。しかも、これじゃないとわかっているダメなメロディーがずっと流れていて、嫌だ嫌だって、うなされることも。そんなときほど、寝る前に安心できる好きな音楽を聴くといいのかもしれませんね。寝室用に素敵なコンポが欲しくなりました」

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