くらし

【紫原明子のお悩み相談】ママ友付き合いが心配です。

『家族無計画』や『りこんのこども』などの著書があるエッセイストの紫原明子さんが読者のお悩みに答える連載。あなたもお悩みを投稿してみませんか?

<お悩み>
はじめまして。
もうすぐ出産を控えている33歳で、現在は産休・育休中です。学生時代の友人たちが一足先に出産をしているので、いろいろアドバイスをもらっていますが、一番不安に感じているのがママ友との付き合いです。極度の人見知りということもありますが、友だちから、ママ友とは仲良くなるな、相当な用事がない限り家にあげるな、LINEは交換するな、と言われました。
しかし別の友人からは付き合いがないと病院の口コミや自治体のサービスなどの情報が手に入り難くなるとも言われ、近所に友人が住んでいない私としては不安も大きいです。 紫原さんはママ友とどのようにお付き合いをされていましたか?
(相談者:ふむふむ33歳、産休育休中の会社員。初産です。

紫原明子さんの回答

ふむふむさんこんにちは。もうすぐご出産なんですね。今年の暑さは妊婦さんにはこたえそうですね。きっともうあと少し。熱中症には気をつけてお過ごしください。

さて、お友達はママ友関係でよほど大変な目に遭われたんですね。そういう話を先に聞いてしまうと恐々としてしまいますね。でも少なくとも私は、ママ友と出会って初めて、友達ってこんなに最高なのかと思い知ったクチなんです。

そもそも私は高校を卒業してすぐに結婚して出産したので、ママ友以前の友達というのはつまり高校時代までの友達のことなんですが、中高生の時期というのはただでさえ多感で、不器用で、人間関係がうまくいかないことも当たり前にありますよね。そこに輪をかけて私は人一倍強い承認欲求を持て余していて、協調性に乏しかったので、結果として学校生活に染まれず、人付き合いに極限まで苦手意識を募らせ高校を卒業しました。で、縁あってそのまますぐに結婚、出産してしまったので、やはり妊娠しても、また産んでからも、しばらくは、まさか自分がママ友とうまくやれるとは微塵も思っていなかったんです。ところが、思いがけず楽しかったんですよね、これが。

ママ友というのは、基本的にはみんな我が子が可愛く、可愛い我が子の安全な暮らしと生活のためのセーフティネット、といった気持ちを共通して持っています。一見、打算的に聞こえるかもしれないけれど、目的が明確にある分、自分を理解されたいとか、自分を認められたいとか、その上で気持ちよくなりたいとか、そんな甘えが先行する関係に陥りにくいという良さがあります。また、幼稚園あるいは保育園から、小学校、中学校と、地域にある程度根付いて、長期的にやっていかねばならないことは皆同じです。こじれるのは嫌だな、と多くの人が思っていることは皆同じなのです。だから私の経験上、常識的なお付き合いが出来るケースがほとんどでした。さらに、同じ地域に住んでいて、近い月齢の子を育てているという時点でライフスタイルも自ずと似てくるので、ともすれば家族だけでは補えない絶妙なサポートを提供し合える仲にだってなれる可能性があります。

うちの子どもたちは幼少期を都心の幼稚園で過ごしたんですが、場所柄、近所はどこもうちと同じように、夜遅くにならないとお父さんが帰宅しない家庭ばかりでした。ならば、ということでしょっちゅうママ友とその子どもと集まって夕飯を食べていたんですけど、これはもう毎度最高にハッピーでエキサイティングなパーティでした。みんなで一品ずつ得意料理を作り合おうということになって、料理しながらビールを飲んだり。夜が更けるのとともに、セックスレス事情を語り合ったり……。

もちろん、人付き合いがうまくいくかどうかを左右するのはほとんど運なので、メンバーによってはどうしてもうまくやっていくことが難しい場合だってあるでしょう。けれどもうまくいく可能性を考慮に入れないではじめから線を引いてしまうというのは、個人的にはどうにも、惜しいような気がしてしまいます。

では具体的に、ママ友付き合いをどうしたらよりよくできるか、ということですが、私が有効だなと感じるのは、次の二つのアプローチです。

1つ。ママ友を呼ぶときは「◯◯ちゃんママ」ではなく本人の下の名前で呼ぶ。

「〇〇ちゃんママ」と言われると絶えず「◯◯ちゃんママ」でいなければいけない気がしてしまいます。けれども「明子さん」というように下の名前で呼ばれると、ただそれだけで私達は、個人対個人で付き合っているんだな、と感じられ、程よい緊張感を感じつつ、同時に個が認められているような居心地の良さを得られます。

そして二つ目。結婚する前の恋愛について聞いてみることです。

これについては、多少は相手の性格を鑑みたり、タイミングをみたりする必要はあるでしょう。その上で、下の名前で呼ぶ、に通じるところも多分にありますが、ママ友って、ただ子どもを生んでママになったというだけで、それまで個として生きてきた人生をすべて覆い隠されてしまうようなところがあります。自分の親に、自分の親じゃない時期があったとはにわかに想像できないように。ママになってできたママ友は、ともすればもう5年も10年も前からずっとママだったかのような錯覚を抱いてしまいます。けれども当然のことながら、子どもが1歳ならば1年前、2歳ならば2年前、その時期までママ友は決してママではなかったわけです。ママ友がママになる前にどんな人生を歩んできたか。職業や大学を聞くと支障があるけれど、恋愛をしてきたかと聞いてみると、言いたくない人は内緒と言いやすいし、言いたい人は気持ちよく語れる。ちょうどよいトピックなんです。

あるママ友は過去に一度、招待状まで送った後に結婚式を中止してフランスに単身留学したという話をしてくれました。また別のママ友は、大学を卒業してすぐ、好きな人を追いかけてアメリカに渡った過去の持ち主でした。

表からは見えない数々の情熱的なドラマが、ママという顔の下に眠っているな、と思わされました。

そもそも考えてみると、ママという共通項がなければ決して交わることのなかったであろう、年齢も、経歴もさまざまな人達と、ママという共通項があるというだけで接点が持てるわけです。かなりのラッキーチャンスにほかなりません。ですからここはぜひ臆せず、親になった副産物として、ママ友との交流を積極的に楽しまれてみてはいかがでしょうか。

イラスト:クロワッサン編集部・どーなつ

紫原明子● 1982年、福岡県生まれ。個人ブログが話題になり、数々のウェブ媒体などに寄稿。2人の子と暮らすシングルマザーでもある。Twitter

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