年に一度、全国のテレビ・ラジオ番組、CM、技術において優れた作品に与えられる「日本民間放送連盟賞」という賞がある。
わたしは、8年ほど前からラジオ部門の九州・沖縄地区審査員として度々呼ばれるようになった。「ワイド」「報道」「教養」「エンタメ」の部門にそれぞれ3人の審査員がつき、AM・FM局から提出された番組を聴いて事前審査を行った後、最終審査会で上位の番組の中から優秀賞を選ぶのだ。最終審査会は毎年、山笠の季節真っ只中の暑い福岡で行われる。審査員もバラエティーに富んだ顔ぶれで、これまでに前ニッポン放送社長であり、伝説のパーソナリティー「カメちゃん」こと亀渕昭信さんや、アナウンサーの辻よしなりさん、「クッキングパパ」の作者で福岡在住の漫画家うえやまとちさんなどが務められてきた。
地方のラジオ番組の審査、これがなかなか難しい。方言のニュアンス、地元ネタ、その土地でのラジオスター。普段聴きなれない番組の1日だけを切り取って聴いても、ヘビーリスナーには到底敵わない。「ラジオリスナーは1日にして成らず」と、この時思い知らされる。
今年も審査の季節がやってきた。暑い部屋で九州・沖縄のラジオを聴いているとまるでその地にいるかのような錯覚に陥る。「この前、牟田町で飲みまして……」「東京に行くっちゅうのは、大変ねって思うと〜」
なぜだろう、センチメンタルな気持ちになるのは……。いかんいかん、これは仕事。ちゃーんと聴いて、審査せんといかんばい。