「子どもを追いかける口裂け女はすごく速いんです。神話の逃げるイザナキを追う、イザナミの手下であるヨモツシコメも速い。追いつかれたイザナキは髪飾りを後ろに投げて追っ手を阻止します。口裂け女もべっこう飴で足止めされる。これと同じパターンは昔話の『三枚のお札』にも見られます。お寺の小僧さんが山姥から必死に逃げるけどすぐに追いつかれてしまい、お札を投げて阻むという」
都市伝説(現代)――昔話――古典神話と、恐ろしい女神の系譜を追究しながら膨大な資料にあたるのはさぞや大変だったのでは?
「読むのはたくさん読みました。そこで感じたのは、どの時代、どの地域であっても、人間の心理は似た話を生み出すのだということ。神話にはそんな側面が確かにあると思っています。怖い女の原型というのは古くも新しくも再生産され続けるのではないでしょうか」
その怖さの根源はどこにあるのだろうか、とぶつけてみると、