くらし

『成田屋のおくりもの』著者、堀越希実子さんインタビュー。「贈りものは、お相手の笑顔を思い浮かべて。」

ほりこし・きみこ●1952年、東京生まれ。’76年に12代目市川團十郎と結婚。着物ブランド「茶屋ごろも」などのデザイン・監修を手がける。「いつか日本の文化と着物についての本が出せたらと思っています。やはり大切にしたいですから」

撮影・森山祐子

表紙のかわいらしい紅白饅頭は、孫の勸玄くんの歌舞伎座初お目見えのときに用意したもの。本のなかほどには、牛肉の折り詰めや公演に合わせて作った記念品、季節の生菓子など、心尽くしの贈りものが写真付きで紹介される。そのほとんどが堀越希実子さんが成田屋へ嫁いでから、夫・十二代目市川團十郎さんと相談しながら選んだものだ。

「夫は若くして両親を亡くしておりますから、家のしきたりなどは古くからいる番頭さんに少しずつ教わりました。贈りものについてはいつも主人に相談して。主人は、細かいことは言わなかったけれど、どのくらいお世話になった大切な方なのだとか、そういったことをよく話してくれましたね」

ご贔屓への記念品は家紋入りの風呂敷に包んで渡したり、忙しい方への差し入れは京都で見つけた豚しゃぶセットだったり。

「大切なのは、お相手がどういうふうに受け止めてくださるか。忙しい方には、さっと火を通すだけで食べられるものを、とか。お相手の喜ぶ顔を思い浮かべて、お贈りするようにしています」

歌舞伎の家に嫁ぎ、息子と娘を授かり、襲名を迎えて次世代へ繋ぐ。希実子さんがこの本を上梓するにあたり考えたことは、

「やっぱり(成田屋の今の在り方を)残しておいたほうが、後の人のためにもいいかなと思いまして」

「おくりもの」がテーマではあるが、成田屋のしきたりや暮らしぶりを通して伝えられるのは、團十郎さんと希実子さんが物事にあたり、常に真直な思いを込めていたこと。そしてまた、その来し方を振り返る希実子さんの筆致には夫への感謝としみじみとした情愛が感じられて。

「ふふふ、そうでしたか?……でも、先日、結婚して初めて泊まったホテルに偶然行きまして、ああ、ここだったんだなあといろんなことを思い出したばかり。常に思っておりますけどね、主人のことは。暮らしのなかにいつもいてくれる。亡くなって、ちょうど5年。これまで落ちこんだり、心の浮き沈みがありましたが、最近、パーッと明るい気持ちなんですよ。今までそばにずっとついていてくれてたんだと思います。でも最近は息子や孫のところへ行ってるんじゃないかしら。希実子が少し元気になったからって」

ふたりの思い出が詰まった本書は、希実子さんから夫への、また團十郎さんから妻への愛に溢れた“おくりもの”であるのかもしれない。

マガジンハウス 1,500円

『クロワッサン』973号より

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