【溝井喜久子さん】最初に全部言わず余白を残す。やりとりで広がるのがツイッターの魅力。
撮影・青木和義 文・一澤ひらり
文章の上手下手より共感が大切。暮らしを伝え、思いを乗せる。
溝井さんは今ひとり暮らし。3年前に夫を亡くし、2人の息子はそれぞれ家庭を持つ。その生活を「ひとり暮らしをするにはその能力がなければできない」と積極的に楽しんで、毎日の食事や庭仕事なども写真付きでこまめにツイートする。〈人に自分の世話をさせることは、人の時間を奪うことです〉などの金言ツイートは、子どもに頼らず自己を律して生きる姿勢があればこそ、多くの人々の支持を受ける。
「私のツイッターに返信がくるのは40代から50代の女性が多いですね。ちょうど私の子どもの世代で、義父母をお世話している人が多いから舅や姑の話は通じやすいし、向こうも書きやすい。共感が大切なんです。それさえあれば、文章の上手下手は関係ないんですよ」
とはいえ物は言いよう。同じことを書くのでも言葉を変えてみたり、印象がやわらかくなるような表現を探したり、自分の思いが伝わりやすい言葉を選ぶように心がける。そんなふうに溝井さんが毎日発するツイートは約60。
「私はツイートを茶飲み話のつもりで書いていますから、なるべく多くの方が参加しておしゃべりしているほうがいいわけですよね。日常生活を書くのなら誰にでもできるでしょ」
暮らしの中で湧き上がる思いを人と共感し合う。ツイッターはその出発点。
溝井喜久子(みぞい・きくこ)●1934年、埼玉生まれ。お茶の水女子大学理学部卒業後、教職に就き、26歳から専業主婦に。2010年からツイッターを始め、介護や高齢者問題など本質をズバッと突いたツイートが反響を呼ぶ。著書に『キクコさんのつぶやき』(ユサブル)など。
『クロワッサン』975号より
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