例えば前に誰かが「子ほめ」という噺を演じていたら「子ほめ」をやらないのはもちろん、この噺は職人の八っつあんが物識りのご隠居さんからものを教わり、真似しようとして失敗する「オウム返し」と呼ばれるジャンルなので、同じ構造の「道灌(どうかん)」「十徳(じっとく)」「一目(ひとめ)あがり」といったネタも演じないよう気をつけます。
落語家にも個人差が大いにありますが、たいてい第一候補のネタを中心に二、三の候補を頭に入れて高座へ上がって少しおしゃべり……落語の冒頭(頭にくっつくから“枕”と呼ぶ)でお客様の様子を探り、雰囲気に合ったものを演じてゆきます。ときには候補でも何でもなかったネタに急に入っちゃって当人が驚いたり……。
とにかくお客様に落語日和をお届けしたいのですね。