重久盛一酢醸造場に関わる30代から80代の女性6名が、普段から作っている黒酢料理を持ち寄ってくれた。
「私は何にでもお酢を入れます。合わない料理はないですよ。特に黒酢はコクと適度な酸味を加えてくれるので、料理の邪魔をしないのがいい」
下野トキエさんが、うれしそうに話す。森由美子さんと重留サチ子さんは、定年まで10年以上工場で働いたご近所さん。黒酢と深く関わりながら、長年、主婦として黒酢料理を作り続けてきた。
「『キビナゴの甘酢漬け』でりんご黒酢を使ったように、『大根と人参の黒酢炒め』や『金平ゴボウ黒酢』などをさらに甘めに仕上げたいときには、りんご黒酢を加えてもおいしいです。自然な甘さになります」(森さん)
「黒酢の入った常備菜を作ったら、1日目は酸味を楽しむ。冷蔵庫で寝かせた翌日は酸味が落ち着き、まろやかになる。その変化も魅力のひとつです。冷蔵庫に常備して夏の食欲がないときにこまめに食べて、バテないようにします」(重留さん)
この辺りは大きなスーパーマーケットがなく、週に1度、移動販売車が来る程度。しかも下野さんは一人暮らしで自家用車も持たない。長持ちする料理は食卓に欠かせない。
「鮭寿司は、我が家の人気メニュー。家族も大好きで、お祝いのときなどによく作ります。今日はこんなににぎやかだけれど、近頃若い人がどんどん県外に。私たちが“黒酢”を飲んで元気でいなければ、と思います」(盛哉さんの妻・重久節子さん)
全員が毎年、梅ドリンクとラッキョウ漬けを仕込むという。黒酢が、夏の福山の人々を元気にしている。