『 ―リアルRPG譚― 行商人に憧れて、ロバとモロッコを1000㎞歩いた男の冒険』著者、春間豪太郎さんインタビュー。「最終的な冒険の目標はサハラ砂漠横断。」
撮影・谷 尚樹
19歳の時、行方不明になった友人を探しに単身フィリピンを訪れたのをきっかけに、未知の世界との遭遇がやみつきに。その後はエジプトのラクダ飼いの見習いになったり、ロバと共にモロッコを1000㎞踏破したり。事始めと2つの冒険譚をまとめたこの一冊。春間豪太郎さんの冒険家としての名刺がわりとなった。
「今やってる冒険は、ラクダでサハラ砂漠を横断するという最終目標を実現するための経験値稼ぎ。今だったら絶対死ぬけれど、冒険家になっていろんなスキルをどんどん身につけていけば、サハラ砂漠横断もできるんじゃないかと考えているんです」
第3章のモロッコ編は、まさにリアルRPG。行商人よろしく荷車を引くロバを連れ合いに、夜明けから日没まで来る日も来る日も荒野を歩く。旅を進めるうちに猫、鶏、犬、鳩とブレーメンの音楽隊式に動物たちが旅の仲間に。
「最初は動物と一緒に冒険するという構想はなかったんです。
僕は冒険のアイディアを出すときに自分の中の子どもっぽい部分を頼りにするんですが、子どもの頃、ブレーメンの音楽隊みたいに動物たちとにぎやかに旅をしたり、ポケモンと一緒に野宿の旅をすることに憧れてたなぁと。じゃあ自分ひとりじゃなく、動物と一緒に冒険しようということに。最初はロバだけのつもりが、だんだんと成り行きで増えていってしまいましたけど(笑)」
旅の間、毎日タブレットで日記をつけ、情報収集のためにネットの掲示板5chにアップしていた。その後、ツイッターのアカウントを作ったことをきっかけに旅の動画や写真がネット上で話題となり、予想外の書籍化に結びついた。
文章にはまったく自信がなかったというが、ご謙遜。スリリングな冒険の詳細や愛らしい動物たちの表情が生き生きと描かれ、ページを繰る手が止まらなくなるほどの達者ぶり。
「最後のページの最後の行まで使い切って書きました。ギリギリまで文字が入るように改行ひとつまで吟味して」
それほどに伝えたいメッセージが目いっぱい詰め込まれている。
「次の冒険の舞台は海。そのための船の免許はこれから取ります。僕の中の冒険の定義は、今、自分ができないと思っていることに取り組むこと。まず冒険のアイディアがあって、それに必要なスキルを手に入れていくんです。サハラ砂漠横断まで、あと10個くらいの冒険をするつもり」
次回の冒険譚が待ち遠しい。
KKベストセラーズ 1,400円
『クロワッサン』976号より