くらし

【紫原明子のお悩み相談】既婚の先輩医師と会い続けるか悩んでいます。

『家族無計画』や『りこんのこども』などの著書があるエッセイストの紫原明子さんが読者のお悩みに答える連載。あなたもお悩みを投稿してみませんか?

<お悩み>
医大を卒業して研修医1日目から3ヶ月、指導医だった先輩医師と2年前、偶然10年ぶりに再会しました。以降、月に2回程度、二人で食事に行きます。
先輩は50代既婚、医師の奥様、成人した子供が二人います。私は30代で独身です。話をしていていると穏やかな気持ちになり貴重な時間ですが、いわゆる不倫関係では全くありません。お酒が入っても怪しい雰囲気にも全くならず、食事をしたらそれぞれまっすぐ帰宅します。
毎回、先輩からの誘いで出かけ、メールには「好きだよ」とか「かわいいと思っている」と書かれていますが何も行動には出ません。私はたぶん先輩のことが好きですが、高い倫理性を求められる職業上、不倫はあり得ません。
先輩の奥様は私と真逆の女傑タイプなので、一種の逃げ場になっているのでしょうか? 今後も会い続けると私の気持ちが不安定になりそうで、寂しいけれどもう会わない方がいいのか悩んでいます。
(相談者:アドちゃん/30代の外科系女性医師です。未婚、パートナーなしです。)

紫原明子さんの回答

アドちゃんこんにちは。昨今話題の女性のお医者さまなんですね。東京医大入試の女子減点問題で、外科系というのは特に女性が少ないと知りました。数々の厳しいハードルを乗り越えお医者さんになってくださりありがとうございます……。

さてご相談の件ですが、私にはやはり“不倫沼”一歩手前のようにお見受けします。50代なんて全然現役ですからね! しかし不倫沼は大変です。一度ハマったが最後、ずるずると足を取られ、抜け出すのに死に物狂いを余儀なくされます。傷つくくらいで済むならまだよく、仕事やお金、何より二度と取り返せない貴重な時間をも奪われかねません。従って、おっしゃる通りもう会わないほうが良いでしょう。

……と、止めるじゃないですか。で、もう会わないほうが良いなと思うじゃないですか。それで連絡を断とうと試みる。……断てればいいんですけどね!

私の古い知人がかつて“プチ我慢”という遊びを提唱し、実践していました。大好きな甘いものを3日間だけ断ってみる。あるいは、いつも毎日飲んでいるビールを3日間だけ飲まないでおく。そんな風に、嗜好品をちょっとだけ我慢する。すると、解禁した日の快楽がいつもの3割増しになると言うんです。

不倫沼の恐ろしさというのも、理性や自制心、周囲の人の忠告といったものが、その後の強烈な快楽のための“プチ我慢”になってしまいかねないところにあります。

年上で妻帯者、しかもかなり年下のアドちゃんさんのような後輩をご飯に誘えるような先輩。好きだよ、かわいいと言葉に出来る先輩。同世代の男性ではとても再現できないような、うっとりと酔わせてくれる大人の余裕を醸し出されているのでしょう。

とはいえ、妻帯者でありながら妻以外の女性に色恋を仕掛ける男性は、不誠実です。

当たり前過ぎる当たり前、基本の基の子音のkくらいのことで恐縮ですが、不思議と恋の最中にいると見えなかったりするので、あえて立ち返らせていただきました、基本の基に。たまに、“既婚者にしか好かれないんだよね”と言う女性もいるけれど、既婚者にしか好かれないということは、周囲に自分と誠実な関係を築きたいと望む異性がいないということで、やっぱりちょっと問題と捉えたほうが良いような気がします。

もちろん、アドちゃんさんがそうだと言っているわけではありません。そして先輩の方も、現段階では好意を伝えるだけに留まっており、それ以上何かを求めるでもないとのことですが……その姿勢がまたなんかずるい感じもしますね。好き、とか、かわいい、とか口にすることで、忘れかけていた恋愛の表層の部分だけを都合よくつまんで自分はとりあえず満足。しかし相手に妙な期待を抱かせて、“共犯になる気持ちを固めてこっちに来い”といわんばかりに優雅に待ちの姿勢を決め込んでいる、うがった見方かもしれませんが、私にはそんな風にも見受けられます。そうした恋愛ごっこに振り回されないのであれば、定期的にご飯を食べる関係を続けることはできると思いますが、不安定になってしまいそうならむしろ“独り身になってからからこっちに来い”と、今アドちゃんさんが何となく持たされてることになってそうな手の中のボールを投げ返してあげたらどうでしょうね。攻撃は最大の防御と言いますし。

何せいくら余裕ある素敵な大人に見えても、20歳近く年下の後輩に、それによって生じかねない多大なリスクを一切無視して、好き勝手に色恋を仕掛けているわけです。果たしてそれが年長者の尊敬に値すべき態度なのか。そこに本当にキュンとくる余地があるかということは、ぜひ折に触れて考えてみてください。

最後になりますが、おせっかいとは思いつつ、ひとつ大事なポイントを標語にしておきました。こちらです。

“不倫沼 失わされるの 自分だけ”

もしよければ、玄関や冷蔵庫に貼っておいていただけますと幸いです。よろしくお願いいたします。

イラスト:クロワッサン編集部・どーなつ

紫原明子● 1982年、福岡県生まれ。個人ブログが話題になり、数々のウェブ媒体などに寄稿。2人の子と暮らすシングルマザーでもある。Twitter

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