くらし

私の猫語は通じるのか?│山口恵以子「アプリ蟻地獄」

  • イラストレーション・勝田 文
『人猫語翻訳機』。170例以上の猫の声を分析。自分の声を録音すると猫語に変換してくれるアプリ。無料。

つい半年ほど前まで、私はスマホに触ったこともなければ匂いを嗅いだことさえなかった。

それが多種多様なアプリのお試しコラムの連載を始めるのだから、運転免許取り立てでテストドライバーを務めるようなもの。身の程知らずというか畏れ多いというか本当に私で大丈夫ですか?

「山口さんが出来ればみんな出来るから」という、妙に説得力溢れる編集者のお言葉だけが頼りです。

と言うわけで、まず記念すべき第一回目のお試しアプリは「人猫語翻訳機」。

これは読んで字の如く、人間の言葉を猫語に翻訳してくれるというアプリで、これさえあれば猫とのコミュニケーションはバッチリ、あなたと呼べば「ニャンだい?」と答える、猫まっしぐらの優れもの。

実は我家では日頃から二匹の猫のDVに悩まされ、「言葉が通じれば話し合いで解決するのに」と嘆いていたので、このアプリは棚からボタ餅、渡りに舟。早速試してみました!

ところが……これは人間の言葉を猫の言葉に翻訳するわけじゃなくて、人間の音声を猫の鳴き声に変換するのですね。だから「おはよう」の一言が「ニャンニャンにゃ〜おニャンにゃ〜」みたいになってしまい、猫たちの驚いたこと! もう目を見開いて恐怖で固まって猫地蔵。

考えてみれば二匹は室内飼いで、他の猫を知らない。だから怖いのだ。可哀想になって止めました。

そしたら二匹がスリ寄ってきて、愛想振りまくじゃありませんか。

これもアプリの効用でしょうか?

山口恵以子(やまぐち・えいこ)●作家。最新刊『食堂メッシタ』(角川春樹事務所)が発売中。

『クロワッサン』973号より

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