原稿について小池さんにはひとつの思いがあった。それはスポーツライターのように書くということ。
「糸から生地を作り、ボディ・シリーズにプリーツ プリーズなど、次々と新しいものを生み続けていく三宅さんの仕事、留まるところのないキャリアを表現するには、乾いた文章がふさわしいと思って」
描き出された三宅さんの歩みには綺羅星の如く、アートやファッション界の著名人が登場するが、いつしか読者は三宅一生その人こそが一際オリジナルな光を放っていることに気づくだろう。
「三宅さんは衣服のデザイナーですが、他の分野の横の糸の強度もすごい。社会との関わりのなかで何をしなければならないか。どう解決していくのか。例えばペットボトルの再生繊維ひとつとってもリサイクルだからそれでいいということではない。その意味を深く考え、さらに美しいものを作れるのかどうか。そういう意志の強さというか、希望が強い」
三宅一生の人物像とキャリアの凄みを伝えるエピソードがデータブックのように重ねられていく。しかしこれだけ長く寄り添う小池さんにして、このタイトルは?