【小池一子さんインタビュー】敬愛する三宅さんへの熱いファンレターですね。『イッセイさんはどこからきたの?』
敬愛する三宅さんへの熱いファンレターですね。
撮影・岩本慶三
B5判のハードカバー、紙クロス貼り。箔押しで表題が入るデザインはただごとでない存在感だ。
「私もこのカバーができてきたときはギョッとしました。裏もご覧になりましたか?」
返してみると、大書された漢字の「一」に「しゅ みやけいっせい で あさばかつみ が よこおただのり」とある(もちろん箔押し)。
「最初は、学生が持って歩ける文庫をイメージしていたのが、思いがけずすごく立派になりました」と著者の小池一子さんは朗らかに笑う。
ドイツの出版社タッシェンの『Issey Miyake 三宅一生』を親本とし、装丁も構成も新たに登場した。特異な存在感もむべなるかな。同時代を並走してクリエイションを見届けてきた小池さんの文章に、1977年のパリコレからショーの招待状を手がける横尾忠則さんのイラスト、ブランドのロゴなどで三宅さんの仕事に関わってきた浅葉克己さんが装丁を担当。
原稿について小池さんにはひとつの思いがあった。それはスポーツライターのように書くということ。
「糸から生地を作り、ボディ・シリーズにプリーツ プリーズなど、次々と新しいものを生み続けていく三宅さんの仕事、留まるところのないキャリアを表現するには、乾いた文章がふさわしいと思って」
描き出された三宅さんの歩みには綺羅星の如く、アートやファッション界の著名人が登場するが、いつしか読者は三宅一生その人こそが一際オリジナルな光を放っていることに気づくだろう。
「三宅さんは衣服のデザイナーですが、他の分野の横の糸の強度もすごい。社会との関わりのなかで何をしなければならないか。どう解決していくのか。例えばペットボトルの再生繊維ひとつとってもリサイクルだからそれでいいということではない。その意味を深く考え、さらに美しいものを作れるのかどうか。そういう意志の強さというか、希望が強い」
三宅一生の人物像とキャリアの凄みを伝えるエピソードがデータブックのように重ねられていく。しかしこれだけ長く寄り添う小池さんにして、このタイトルは?
「(微笑んで)なんていうのかしら。受けた教育でも学問でもない。どうしたらあんな仕事ができるのか、その発想がどう生まれてくるのか。絵本にしてみたいと思ったこともあります。三宅さんが生まれた1938年はスーパーマンがクリプトン星から地球に送り出された年。三宅さんはどこからきたのか、やっぱり不思議です」
HeHe 3,200円
『クロワッサン』967号より
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